6 / 5 【すとぷり】

episode : 42 ページ46

あの日から,どれ程の月日が経っただろうか .


気付けばすとぷりは,お兄ちゃんは,遥か遠く手の届かないような人間になっていた.






「 牛肉論 」





お兄ちゃんのリスナーさんの中では有名な言葉.


あれも今思えば,昔あった出来事から派生で出来た言葉でもあるのかなぁなんて思いながら,今でも私が辛い時はあの理論を思い出している.


あの時お兄ちゃんを傷付けていた人達が今何をしているのかは分からないけど,
もうあの時みたいに口出し出来ない程,お兄ちゃんは大きくなったんだ.


もうあんな言葉が心に刺さらない程強くなれてるんだ.


お兄ちゃんの過去の配信を聞きながら,私はパッキングを進める.




職場の, 病院 には有給をしっかり申請したし,心置きなく楽しめる.


今思えば, 医療事務者 なのに,
お兄ちゃんの症状から何の病気か粗方分かっていたのに,手を差し伸べられなかった私に後悔が残る.






「 … やば , タクシー捕まえなきゃ 」





そんな思いを胸に,家を飛び出し,急いで空港へと私は向かった.

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