episode : 32 ページ36
殴られて赤くなった頬を抑えながら,お兄ちゃんはゆっくりと立ち上がった.
何を思い立ったのか,冷蔵庫まで向かい冷蔵庫を漁り出した.
突然の謎の行為で全員が戸惑う中,お兄ちゃんは紙袋を手にし,こちらへ戻ってきて,5人の前に差し出した.
「 これ , 俺がAの家に逃げて来てから飲んだ薬の量 」
「 … は , この量が ? 」
「 で , これがつい最近出来た手首の傷 」
紙袋の中からは信じられない量の錠剤のゴミが出て来た.
これは私も知らなくて,動揺が隠せなかった.
たった1週間でこの量は,正直異常だった.
挙句の果てには,あんだけ見せたがらなかった腕の傷をお兄ちゃんは見せた.
深深と,肉が見える程の傷で.
縫われたのが分かる糸が,痛々しくて.
「 俺さ , ずっと死のうとしてたんだよね 」
ようやく聞けた,お兄ちゃんの言葉.
「 いつから , そんな事考え出したかも覚えてねぇけど
毎日 , 毎日毎日 , 誹謗中傷の言葉が俺の元に届いて ,
本っ当に頭狂っちまいそうだった 」
「 でも , 何とかお前らに迷惑掛けたくなくて耐えた
それでも , やっぱ人間って限界ってもんがあってさ 」
「 さとみはすとぷりに要らない
この言葉見た瞬間 , 何かが切れちゃってさ
気付いたら , 俺 , ベランダから身乗り出してたんだよね 」
…そんなこと,初めて聞いた.
笑い混じりに話すお兄ちゃんだが,誰1人として笑える人なんて居なかった.
ベランダから下を1時間眺めた日 ,
首に巻くロープを買った日 ,
沢山の錠剤を買った日 ,
包丁の先をお腹にあてた日 .
お兄ちゃんは,私達の想像を絶する日々を,今日まで過ごして来ていた事を知った.
あんなに明るくて,真面目なお兄ちゃんのそんな事をする姿だなんて想像も出来ない.
「 だから俺は , 6月4日っていう大切な日を乗り越えた後 ,
すとぷりを脱退しよう , そう決めてあの発言をした 」
6月5日って,何だか6人が5人に減ったみたいで分かりやすくて良くね?
だなんて冗談交えてお兄ちゃんは言ったのだろうけど,誰1人冗談は通じなかった.
「 何で , 俺達に相談はしてくれなかったの ? 」
フラフラとした足取りでソファに座るお兄ちゃんに,ななもりさんがそう問いた.
「 … 皆だって , アンチに耐えてんじゃん
俺だけ , 耐えれませんでした助けてください って言えないでしょ 」
そうお兄ちゃんが言うと,ななもりさんは再び涙を零し始めた.
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ましゅ☆まろ。紫月まろ。(プロフ) - 泣きました。そして、今更ながらですが、完結おめでとうございます! (7月25日 12時) (レス) @page49 id: df7b4f216a (このIDを非表示/違反報告)
たろち - 完結おめでとうございます!!とても生々しく人間らしい、そしてすとぷりらしい大好きな作品です。ありがとうございました。 (2022年2月17日 5時) (レス) @page49 id: e2d4e1bc60 (このIDを非表示/違反報告)
namo(プロフ) - いちごオレ。さん» ありがとうございます(;;)♡ (2022年2月13日 13時) (レス) id: eec0e0c5bb (このIDを非表示/違反報告)
namo(プロフ) - らいかさん» ありがとうございます;; (2022年2月13日 13時) (レス) id: eec0e0c5bb (このIDを非表示/違反報告)
namo(プロフ) - 緋桜ひよ子@ミスキャト黄色担当さん» 見付けて下さってありがとうございます(;_;)こちらこそありがとうございました! (2022年2月13日 13時) (レス) id: eec0e0c5bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:namo | 作成日時:2020年11月26日 3時