6 / 5 【すとぷり】

episode : 17 ページ20

「 ななもりさん , 意識戻ったって 」





「 そうか … 」






そうやって安堵の表情を浮かべる兄は気が少し楽になったのかソファにダイブした.


あの後お目当てのレストランには行けなかったけど,私も気が気じゃなかった為またの機会に行こうと兄を誘った.


それよりも引っかかるんだ.


すとぷりが原因じゃないことは確定したんだ,
なら何で兄は苦しんでいるの?


理由なんて聞いても教えてくれないのがオチ.
でも自分で探せきれるとは思っていない.






「 ころんとか泣き叫んでんじゃねぇかな 」






ｶｯｶｯと特徴的な笑い声を漏らす兄.






「 莉犬とかあたふたしてそうだもん 」






ジェスチャーをして見せる兄.


その後も全員分の反応の予報を口にした.






「 すとぷりのこと … やっぱ好きなんだね 」





「 当たり前だろ 」





「 じゃあ何で , 苦しんでいるの ? 」





「 Aには関係ないだろ 」





「 関係なくないよ !! 」






感情的になってしまう私.


でも抑えきれなかった.






「 私達家族なんだよ ?!
家族が苦しんでる姿見て見過ごせる訳ないじゃん !! 」





お兄ちゃんの頬に触れて無理やり視線を合わせる.


辛いなら口に出してよ.


溜め込まないでよ.


もっと正直になってよ.






「 お前みたいな … 」





「 何 ? 」





「 お前みたいな奴だけどお前じゃない奴 」






その言葉を聞いて「何言ってるの?」としか思えなかった.


何のヒントにもなってないし,そもそもそれが原因かも分からない.


意味わかんない,そう言うとお兄ちゃんは私の頬を抓った.






「 俺はそれにもう耐えれなくなっただけだ 」






無理やり口角をあげて笑顔を作っているのが分かる.


それでも私は先程迄の威勢は失い,私の部屋へと向かう兄を止めることは出来なかった.






「 お前みたいな奴だけどお前じゃない奴 … 」






あれから数十分考えたが本当に何も浮かばなかった.


一体何に耐えきれなくなったの…?





――





それから1週間後,私があの言葉の意味を知ることになったのはそう時間が掛からなかった.


意味を知った私は,何も言葉にする事が出来なかった.

episode : 18→←ご報告

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す