【募集企画】天空魔法学院part2【小説ver】 (ページ2)

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第五十一話【みとりすふ】ページ2

「……暇」

炎、火の系統の魔力を持つ者が集う寮、フレイム寮。同玄関の横、顔面の大半を装飾品で隠した少年──クロロ・Ｈ・メルスが、首元から膝下までを覆う真白いローブの裾を弄りながら呟く。

平生ならば顔全体を覆うガスマスクを付けている彼は、入学式だからと鼻から下を覆う簡易的なガスマスクを付けていて、時折慣れないと言いたげに目元近くの肌と接触している部分を掻いている。

もう何度目だと数えるのも億劫になるほど吐いた溜息は、ガスマスクに阻まれくぐもっている。

「鮮かロロの対抗戦見たかったけど……なんもできないから生殺しだしなあ……」

昔馴染みであり親友である色鳥鮮、出身国アキュレトール皇国の王宮の元使用人で交流があったロロ・リベリエン。親しい彼らの戦う姿を想像し、葛藤する。

何を隠そう、彼は生粋の戦闘狂であり、自らの快楽になるもののためには残忍で冷酷な一面を惜しげもなく見せ、普段はその本性を隠すために八方美人で飄々とした態度を取る猫被り。

今日行われる対抗戦など、彼の闘争本能を刺激するには十分であり。

入学初日で化けの皮が剥がれる……というより戦闘狂や問題児のレッテルを貼られるは憚られるし、かといって生殺し状態ではいたたまれない。

故に。彼は体調不良を装い、一足先に寮へ来てサボタージュの限りを尽くしていたのだが。

「暇すぎる……!!」

荷解きも終わってしまってやることなし。新入生も上級生も対抗戦の出場者、または観客として出払っている。

皇族の住む御殿から遠く離れた離宮で、機械的に業務を熟す使用人数名と暮らしていた彼にとって、この学院で起こるだろう“人との関わり”は楽しみにしていたのだが、生憎クロロと同じようにサボっている生徒は見当たらず。

結局、どの道を選んでも生殺しじゃないかと眉を顰める。

「……こうなったら寮巡りでもしましょうか」

ふと思いついた妙案に、好奇心が心を疼かせる。

そうと決まれば有言実行、と自室に駆け込み愛用のフルフェイスのガスマスクを取り出し。

「いざ出発ー！」

意気揚々と玄関を開き、ガスマスクを付けた彼は走り出した。