【29】崩れだすバベルの塔 ページ39
唐沢父side
あの子はついに、慈愛の心を持った。
こんなに嬉しかったことは、この子が生まれて以来___いや、この子が不快という感情を得てから___ 久しぶりのことだ。
かつてのAは、怒りや悲しみ、喜びなど、自らに関係のある感情しかもてなかったが、ついに他人を気遣い慈しむ感情が生まれたのだ。
凪沢くんといったか…彼に対する、母性に近いものかもしれない。
やっと…やっと…、「心」に近づいてきた…………。
あの子は………Aは私の娘同然だ。大切に、そして、私なりに愛してやったつもりだ………
……さて、もう眠っているだろう。メンテナンスとデータの解析をせねば。
私はAの部屋へ入ると、ベッドで寝ているAに近づいた。
そっと髪を撫でてやる…。長い髪を指ですくと、相変わらずつやつやだ。
人工毛髪に異常はない。
次に、Aの寝巻きのボタンをいくつか外し、右肩を露にする。
そこには、手のひら大の蝶を模した紋様がある。私がメンテナンスようにつけた、バーコードのようなものだ。
白衣から器具を取りだし、紋様にかざす。
……………!?
データの蓄積が、異常な速さで進んでいる。新しい学校でのデータを取り込んでいるとしても速すぎやしないか。それともより人間の「記憶力」に近づいているのか………
うむ。消去した記憶も戻ってはいないし、そう問題は………ん?
なんだこれは。
データの一部が、順番が………
ファイルの容量が足りずに、データが錯乱している…?
とりあえず、朝までにファイルを増やしておこう。
しかしこのままではそれもいっぱいになってしまうから、新しいタイプのファイルを作成せねば………
私はAの寝巻きを直し、もう一度頭を撫でてから部屋をあとにした。
.
かがくしゃは、おおきなまちがいをおかしてしまいました。
No.iは…ちっともふつうではなく、こわれているところがあったのです。
かがくしゃは、No.iがかつていちどもこわれたことがないからと、ゆだんしていたのです。
No.iは、ひつようなきおくまでもがきえてしまっているのでした。
ただじゅんばんがちがうだけなら、ようりょうをふやしてやればNo.iはじぶんでもとのじゅんばんになおすことができます。
しかし、きえてしまったきおくはぜったいになおせないのです。
今日の海の男!
浪川「おい、そこのお前!…俺の彼女になれ!!」
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涙音(プロフ) - *文月*〜huduki〜さん» 返信遅くなってごめんなさい。こんな風に誉めていただいたのははじめてです。書いていて良かったです........!実は近々この続編を上げることになりました。もしよろしかったら読んでみてください。本作よりさらに良いものになるよう精一杯執筆いたします。 (2016年12月11日 23時) (レス) id: 541fead6be (このIDを非表示/違反報告)
*文月*〜huduki〜(プロフ) - 私は5年くらいこのサイトで色々な小説を読んできましたが、その中でこの作品がダントツで面白いです。もっと熱く語りたいのですが、文字数の上限をこえそうなのでこれくらいにしておきます。気持ちが伝わると嬉しいです。これからも素敵な作品を作っていってください。 (2016年11月14日 10時) (レス) id: bb022945e6 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 律華@Twitterはじめました。さん» コメントいただいて久しぶりに戻って参りました…とりあえず少しだけ更新しましたが、夏休みに完結できたらと思います!すっかり放置してました… (2015年7月4日 21時) (レス) id: 71e3a373e6 (このIDを非表示/違反報告)
律華@Twitterはじめました。(プロフ) - 更新頑張ってください!続き見たいです! (2015年7月4日 5時) (レス) id: 7cb333b288 (このIDを非表示/違反報告)
海王星(プロフ) - 久しぶりの更新だね笑 相変わらずの素晴らしい文才!期待に胸が弾むぜ( ´∀`)← (2014年8月9日 17時) (レス) id: c49ea11c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙音 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時:2014年1月14日 1時