【24】記憶の錯乱 ページ32
____夕焼けが見える土手の上。私は誰かの隣に座り、その夕焼けを眺めている。
私よりずっと背が高く、髪が風になびいている。
ぼんやりと誰かの輪郭が消え、風に流されるようになくなった。
浪川「………気がついたか?」
ふと気がつくと、私はベッドに横たわっていた。そばには浪川くん。
唐沢「私は………えっと」
頭を抱える。星降が私の手を引っ張って、それから突き放されて……………
浪川「怪我はないようだが」
ぼんやりとした頭に、浪川くんの声が響いてくる。
唐沢「………浪川くんは大丈夫なの?」
浪川「打撲が何ヵ所か。…あ、でもほんの少しだぞ」
ニッと笑う浪川くんは、白い眼帯をしていた。…私が見るに、そこも殴られたのだろう。
唐沢「………そこ、痛い?」
浪川「どこだよ」
唐沢「目」
浪川「ぜんっぜん。痛くも痒くもねーよ」
また浪川くんがニッと笑ったけれど、今度は少し顔を歪めた。傷に響いているのだ。
唐沢「よくわからないけど、私のせいでこんな事になったんでしょう?…………ごめんなさい」
私は横たわったままでは申し訳ないので、上体を起こしてから頭を下げた。
頭を下げると、なぜだろう、不思議と涙が溢れてきた。
浪川「謝るな。お前のせいじゃねぇ」
浪川くんが少し声を荒げて言った。浪川くんは苛立っているようだった。
浪川「お前が狙われてたのは事実だ。………でもお前が悪い事にはならねーよ」
浪川くんは重いはずの体を引きずり、私のベッドに歩み寄った。浪川くんの顔を覗きこむと、ひどく不安げな顔をしていた。
浪川「A、聞いてくれ」
浪川くんが私の頬に触れる。私は思わず緊張して下唇を少し噛んだ。
浪川「俺はお前が好きだ。…初めて会った時から。
………運命としか思えねぇんだ。一日中、たとえ寝ててもお前のことしか考えられない。お前が愛しくてたまらない」
浪川くんは少し、私に顔を寄せた。そして私の返事を待つように、私の目を覗きこんだ。
また、頭がズキズキと痛んだ。緊張するとこうみたい。私は一度目を閉じてから口を開いた。
唐沢「…………私も、大好き……………」
浪川くんが急に顔つきを変えた。今までに見たことがない、凛々しい顔。
男らしい顔つきになった浪川くんが、私の唇に自分の唇を寄せた。
………まだ、少し開いていた私の唇に。
今日の海の男!
浪川「おい、そこのお前!…俺の彼女になれ!!」
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涙音(プロフ) - *文月*〜huduki〜さん» 返信遅くなってごめんなさい。こんな風に誉めていただいたのははじめてです。書いていて良かったです........!実は近々この続編を上げることになりました。もしよろしかったら読んでみてください。本作よりさらに良いものになるよう精一杯執筆いたします。 (2016年12月11日 23時) (レス) id: 541fead6be (このIDを非表示/違反報告)
*文月*〜huduki〜(プロフ) - 私は5年くらいこのサイトで色々な小説を読んできましたが、その中でこの作品がダントツで面白いです。もっと熱く語りたいのですが、文字数の上限をこえそうなのでこれくらいにしておきます。気持ちが伝わると嬉しいです。これからも素敵な作品を作っていってください。 (2016年11月14日 10時) (レス) id: bb022945e6 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 律華@Twitterはじめました。さん» コメントいただいて久しぶりに戻って参りました…とりあえず少しだけ更新しましたが、夏休みに完結できたらと思います!すっかり放置してました… (2015年7月4日 21時) (レス) id: 71e3a373e6 (このIDを非表示/違反報告)
律華@Twitterはじめました。(プロフ) - 更新頑張ってください!続き見たいです! (2015年7月4日 5時) (レス) id: 7cb333b288 (このIDを非表示/違反報告)
海王星(プロフ) - 久しぶりの更新だね笑 相変わらずの素晴らしい文才!期待に胸が弾むぜ( ´∀`)← (2014年8月9日 17時) (レス) id: c49ea11c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙音 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時:2014年1月14日 1時