Light and Dark -5- (ページ9)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:17,238 hit

209 ページ9

.

「ルシウス、おまえはもう杖を持っている必要がなかろう」

衝撃的な一言に、僕は咄嗟に父上の顔を見上げた。

「わが君？」

父上は恐怖に凍りついた表情で帝王を凝視し、震えていた。

「ルシウス、おまえの杖だ。
俺様はおまえの杖を御所望なのだ」

「私は...」

父上が反論しかけた口を閉じた。

母上がテーブルの下で父上の手首を握って制したのがわかった。

父上は何も言わずに、ローブから杖を引き出し、隣りに渡した。

杖は次々と手送りでおの人の手まで運ばれる。

「ものは何だ？」

「楡です、わが君」

「芯は？」

「ドラゴン。ドラゴンの心臓です」

「うむ」

杖を取り上げられた父上はそれから一言も言葉を発しなかった。

かつては死喰い人のリーダー的存在だった父上が、杖を失い丸腰でただ自分の拳を見つめている。

マルフォイ家の地位が陥落した瞬間だった。

「ああ、そうだ。
セブルス、客人が誰だかわかるか？」

帝王の一言で、全員が天井を見上げた。
宙吊りの魔女が怯えきった声を出した。

「セブルス！助けて！」

「なるほど」

スネイプは何の感情もない声でそう言った。

「お前はどうだ？ドラコ？」

突然あの人に自分の名前を呼ばれ、震え上がって必死に首を横に振った。

この人に逆らってはいけない。

ドラコはもう、その客人の姿を見る事さえできなかった。

「いや、お前がこの女の授業を取るはずがなかったな。知らぬ者にご紹介申し上げよう。今夜ここにお出でいただいたのは、ホグワーツで教鞭を執られていたチャリティバーベッジ先生だ」

「セブルス...お願い...」

「黙れ」

バーベッジの命乞いをスネイプはピシャリとはねのけた。

「魔法族の子弟の精神を汚辱するだけでは飽き足らず、バーベッジ教授は先週、日刊預言者新聞に穢れた血を擁護する熱烈な一文をお書きになった。

純血が徐々に減ってきているのは、バーベッジ教授によれば最も望ましい状況であるとのことだ。
我々全員をマグルと交わらせるおつもりだ...」

さっきまで父上の物だった杖を頭上に掲げ、帝王は見せしめを行った。

「アバダケダブラ」

緑の閃光が部屋の隅々まで照らし出した。

バーベッジの死体がドサッとテーブルに落下し、俯いていた僕の視界に入ってくる。

僕は声もなく叫び、椅子から床に転げ落ちた。

.