▽悪足掻き７６話 ページ29
脇腹に弾を受けた。どくどくと血が外へ流れ行く感覚と、声が出ない程の痛み。だがそれ以上に頭は状況を理解するのに忙しいようで、傷口を抑えた私は総統を地面に伏せさせたまま低姿勢で周囲を見た。
外ゲレンデで、しかも遠隔からとなると発砲音も特に聞こえない。私達以外に人もいない訳だし、私がどうにかやり過ごせば騒ぎが起こる事はなさそうだ。
gr「待て、すぐに医者を」
『馬鹿、なんですか…総統。この状況で、騒ぎを起こせば犯人の思うツボです…混乱に乗じて貴方を殺すなど目を瞑ってでも出来ましょう』
gr「……だがお前、」
『今更何を心配なさるおつもりですか、』
だらだらと服を汚していく真っ赤な血にグルッペンは顔を顰めた。それでも軍人かと思う程度に痛い顔をする。
今まで散々私を上手く無視していたのだから今だって早く見捨てて走って逃げてほしいのだが。私は別に総統が生きようと死のうと何だって構わないけれど、この役を受け持った限りは遂行せねばならない。
中途半端に投げ出してしまっては余計舐められるだけだ。
ふと見ればグルッペンの服にも何箇所か血が飛び散っていた。
申し訳程度にハンカチを渡そうとパケットから出したが、それも当然の如く赤く染まっている。
と、その時。
不意にベランダの手摺りに降り立った一つの影。
zm「手負いが一人」
gr「ゾム、Aを連れて城へ戻れ。此方もトン氏と合流次第跡を追いかける」
『…』
来たか。
グルッペンはすっと立ち上がるなり私を一瞥して足速にその場を去っていった。外套を私は被せるなりパーティー会場へと姿をくらませる。「グルッペンが珍し」なんて外套を見たゾムが吐き捨てたがこれは優しさなんかでは無い。単に血がついたものを持っていたら不自然に見えてしまうからだ。妙に納得したように頷いたゾムはにっこりして私の前にしゃがんだ。
どうにもゾムとは昔から気が合わない。
まともに話した記憶も無いのだが、本能で動くようなこの男と私とでは性格が違いすぎるから。
zm「どうしたろうかな」
狂気的な笑みだって好きでは無いし。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1759人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと - 凄く面白い作品です…、どこからどこまで、いや全ては総統様の掌で踊らされてるのか…初めっから、出会ってしまった時から潜む狂気を見つけられてしまった時から、夢主はこうなるしか無かったと…見てる限りもう逃げ道無くね？？夢主はもう足掻けないのか…真相や如何に (9月27日 21時) (
レス) @page44 id: ffe5a6a019 (このIDを非表示/違反報告)
菊(プロフ) - 一気見させていただきました。正直つらいです。普通に泣きました。心がもう打ちのめされて…夢主辛いよな、わかるよ、頑張れって言ってあげたい。更新いつまでもお待ちしております、作者様のペースで十分ですので完走なさることを祈っております。頑張ってください！ (2022年7月27日 16時) (レス) @page26 id: 073ffef2d2 (このIDを非表示/違反報告)
ショートピース - この作品本当に大好きです‼︎終わり方が全くと言っていいほどわからないんですよね､､､｡1話読むごとに考察が変わっていって､ほんとに続きが楽しみすぎます｡次の更新待ってます!頑張ってください‼︎ (2022年3月5日 2時) (レス) @page26 id: 4c8fcac512 (このIDを非表示/違反報告)
明引 - わー！更新されてる！！有難うございます、気長に待ってますので頑張ってください！ (2022年2月19日 14時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
炉兎 - 更新何時までもお待ちしていますので、ご自分のペースで頑張ってください。 (2021年10月1日 15時) (レス) id: 08e88269ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：零
| 作成日時：2021年8月30日 23時
