▽指揮官と総統閣下 ページ2
.
gr「…何故撃たなかった」
正方形に作られた狭い地下牢の中に一人座る男は、私に向かってそう問うた。鉄格子越しに鋭い視線が刺さる。
時刻は深夜二時_____
無事戦争は私達の軍が勝利を収め、我々国が負けに終わった。我々国、初の敗北。
総統を人質にとられた…いや、我々国はきっと総統は死んだ、とそういう事になっている筈。
『殺すには惜しい存在もいるさ』
gr「捕まえてどうする。拷.問でもして情報を得るか？」
『…そう死に急いだっていい事は無い』
gr「…」
すっと目を細めて薄く笑った総統は、自分の今の状況なんて把握しようともせず、ただ単純に楽しんでいる様だった。余裕そうな顔を崩さず、必要以外口を開かない。
その妙な自信と余裕は何から来る？…やっぱ仲間なのか。仲間に恵まれているんだろう、この男は。
『我々国は死んだ』
正確には、機能しなくなった、だろうけど。
総統を捕まえ、ここに入れてから早三日。それだというのに、我々国の情勢は崩れているという。
それが嘘か真かは知らんが、少なくとも下層部分にボロが出ているのは間違いない。
あれだけ暴れたんだ。無傷の方が可笑しい。
____ふっ、と笑う声。
gr「"我々"は死なない」
全てを見透かした様な笑みに、怖いくらいの威圧感。これじゃ、どちらが捕われているのか分からない。
『…いいや、人は死ぬ。貴方もいずれそこで命が尽きるんだ。私はそれを見届ける役を任されてしまった』
gr「残念だったな、その役を果たす事は出来ない」
『果たすさ、力づくでもね』
自信と余裕と期待。
今のこの男を表すにはそれがいちばん正しい気がする。きっと今、私が席を立って他の兵に任せたら確実にその兵士は死ぬ。
代わりに牢の外に立つのはこの男で、この戦争の勝利も無かった事にされる。
gr「お前は、仲間に恵まれなかったらしい」
グサリと何かが自分に刺さる。的確に中心を突いて、男は哀れみの目に似た様なそれを私に向けた。
___恵まれていたさ
『それは、違う』
恵まれなかったんじゃない。仲間を恵んで欲しくなくて、自分で全部突き放したんだ。
『仲間なんて要らない』
男は、楽しそうに笑うだけ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零(プロフ) - kouboukunさん» ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！多分は基本的に危なそうだな…という勝手な想像に共感してくれている様で何よりです…()これからも更新頑張ります！ (2020年5月24日 18時) (
レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
kouboukun(プロフ) - なんかこれを見て思いました・・・。総統の多分は危ない多分ですね(*´▽｀*)面白かったです！すごく夢中になって読める小説だし、奥が深くて、好きです！（突然の告白。）これからも更新頑張ってください！！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: 6b5d77f9d6 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - seruharu217さん» syp君についてはまだ出て一話目ですので、情報量が少なかった様ですみません…次の話辺りからもう少し詳しくするつもりですので、その際分かるかと…！（質問に添えていなかったら申し訳無い）ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！頑張ります！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - もっちさん» ありがとうございます！今や社会はその話題で持ちきりですしね…無事元の暮らしが出来る事を祈るばかりです。今後も面白い作品に出来る様、更新頑張っていきます！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
seruharu217(プロフ) - あの、すみません。ショッピ君ってどんな立場ですか？二人いる感じなんですかね・・・？このお話は好きです！更新頑張ってください！ (2020年5月13日 17時) (レス) id: e769def405 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：零
| 作成日時：2020年3月15日 14時
