命がいくつあっても足りない。【赤井秀一】

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『……君のその口は飾り物なのかな？』


職権乱用した結果。
何の成果も得られませんでした。口を開くどころか逆に疑いの雰囲気が濃くなった気さえする。

その場から一歩も動こうとしない青年。

傘を差し出した手が疲れたのでそろそろ帰ろうかと諦めかけるFBI捜査官。


度胸あんのはどっちだか…、



『…まぁいいや、』



完全に傘を差し出した状態で、上から淡々と言葉を吐き出す。鞄にFBIのジャケットがあるが多分びしょ濡れだろうな。
あとでちゃんと洗濯したるからな、私のジャケット。




『私はFBI捜査官の玖我A。
お察しの通り、出身は日本です


…正直、今ここで君がのたれ死のうと毛程も興味無いんだけど。見捨てると私の仕事が無くなりそうだし、見捨てられ無いんだ。

悪いがFBI捜査官(わたし)に協力しくれるかな』




にこりと笑ってもう一度名前を聞く。


初対面の人とのコミュニケーションは第一印象が大事。笑顔で元気に礼儀正しく。

まぁ、今更遅いかもしれないが






「…俺は、赤井秀一」





"赤井秀一"


そうか、と短く返して一つ頷く。




『それじゃ、赤井秀一君。君と話がしたいんだけど』




赤井秀一は、一度考え込む様に顔を逸らしてから再び目線をこちらにやって静かに頷いた。此処からこの子の家に連れ帰っても良いのだが、警戒心バチバチの人間が素直に行動してくれるとは思えない。

ゆらりと立ち上がった青年は、私より背は低いが、特別低いという訳でも無い。
これから伸びるんだろうな、くらいの身長。



『さて…って、どこか行く前にその格好を何とかしようか。流石にびしょ濡れじゃぁ、店にも入れない』
「…別に、」



ぶっきら棒にそう言葉にした赤井秀一。
いや、君が良くても店側が宜しく無いんですわ。



せめて何か上着くらいまともなのが無いといけない。
そういう訳で、私御用達の店で適当に上着とキャップを購入する。
店の前に傘を持たせて待機させていた赤井秀一は、大人しく待っていてくれた。



『サイズは大きくても我慢してくれ、因みにキャップは被っておいて』



何も言わずに上着を受け取った少年に、キャップを被せる。万一本当に喧嘩してたとして、相手と鉢合わせたら面倒だからね。

平和主義なんで、私。

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