命がいくつあっても足りない。【赤井秀一】

▽16話___「勘違い」 ページ21

『はは______、』



何なんだこの人。


可愛いと言われて戸惑っているという訳では無い。いつか見たあの日の緑が一瞬見えて、頭の奥を強く殴られる感覚がした。
心拍数が上がりすぎて死ぬんじゃ無いかという程、

寒気、というのが正しいのか。
よく分からない殺気に似たそれはFBIにいた時のあの感じと似ている。



_____と、




「あーっ‼昴さんAお姉さんの事いじめてる！」
「女の子は大事にしろ、って母ちゃんに教わらなかったのかよ」
「元太君の言う通りですよ！いくら昴さんでも、僕たち少年探偵団も怒りますよ！」


「『え？』」



コナン君とぴったり声が被る。


声という程のものでもないけど、無意識のうちに驚きから出た何かに二人顔を見合わせて顔を傾げた。
横にいる沖矢さんは「そんなつもりは、」と眉を下げている。
…彼等には何がどう見えているのか。


そんな雰囲気を感じ取ったのかは分からないが、可愛い代表の歩美ちゃんが口を開く。






「だってAお姉さん、顔真っ青だったから…‼
もしかして昴さんが何か言ったのかな…って、」







歩美ちゃんに続いて「大丈夫か」「どうかしたんですか」と不安そうな子供の声。

返答に迷うべくコナン君の方を見れば彼も彼で苦笑いしていた。子供らしくないな、なんて思って一先ず沖矢さんを一旦見てから再び彼等に向き直る。



『あはは…心配ないよ。沖矢さんは何も言ってないからね、ちょっと体調不良だったというか、』

「そうなの…？」

『うん、だから大丈夫。気にしなくていいよ」

「そっか！それなら良かった！疑っちゃってごめんなさい昴さん…」

「勘違いくらい誰にでもあるから大丈夫ですよ、お気になさらず」




とはいえ若干笑顔がひくついている様ないない様な…
引目で彼を見ていれば"何か？"とでも言うような顔をされる。…いや、いつも通りの笑顔ですね。気の所為だな。うん。


そう安心させれば室内で遊ぶのに飽きたのか子供達は外に行くといい始める。
コナン君も無理矢理腕を引っ張られている…

やっぱ子供は子供か。




「あっ、Aおねーさん！そこの紙貰っておいて！」




コナン君が部屋から出る直前に指を指した机の上。
そこには確かに番号の書かれた連絡先。


…登録しとけって事か。

▽17話___「冗談混じりの本音」→←▽15話___「負けず嫌いな」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す