命がいくつあっても足りない。【赤井秀一】

#13話___「約束事」 ページ18

そう聞けば「いや、」と前置きなのか何の言葉なのか…とにかくそう小さく口にした赤井君は、
私の方をふっと見て真剣な顔で語りかけた。


「貴女がFBIに入った理由、聞いてもいいですか」


前は敬語が無かったからなのか、だいぶ違和感があるが仕方ない。育ちの良さが滲み出ているぞ赤井君。


『そうだなぁ…』


無いのでは？？
と、思ったのだがここでそれを言っては信用に欠ける。せっかく傘を届けに来てもらった上に、今日は以前と違い天気も良く何よりしっかり対話が出来る。
この赤井君について別に知りたい事がある訳でも無いけれど、面白そうだから聞いてみたい。





『君みたいな将来有望そうな子供を引き抜いて、
一人でも多く英雄(ヒーロー)を残す為、かな』





こんな事大して思った事も、考えた事も無かった。
口から飛んで出た言葉に身を任せるのも有りかもしれないし。


この一言で何か面白そうな事が起きるかもしれない。賭けは好きじゃ無いけど、乗れるなら乗っておきたい。FBIは平和を願うべきだ、って言われそう。
けど、願ってばかりでは何も始まらないだろう。

偶には此方から爆弾並の何かを仕掛けるのも良い。



「…そうですか、」
『あれ、自分から聞いておいて興味が無いと…。まぁ赤井君にはちょっと物騒な世界だねぇ』
「俺にとって、？」
『そう。君みたいな子供(ガキ)が来ちゃ危ないところにおねーさんはいるんだよ』



ガキ、という単語に一瞬顔をひくつかせた赤井君は「へぇ」と少し怒気の困った声を漏らした。


怒っているわけでは無いのかもしれないけど、子供はガキだなんだと言われたら多少腹が立つものだろう。
現に今の私ですら上司にガキ扱いをされる時があるが、
それはそれで結構腹が立つのである。

ガキじゃありませんけど？？？
FBIとして働いてますけど何か？？？



「俺がFBIに入ったら貴女の事は簡単に追い抜かします」

『おぉ…言ってくれるね赤井君。気長に待って、もし本当にやり遂げたら一つくらい頼みでも聞いてあげるよ」

「…後悔しないと良いですね、今の言葉」



何か新しい物に挑戦する子供らしい笑み。

この時点で何となく思ってはいたのだ。彼がFBIに入ったら、きっと誰よりも凄い大物になる、と。



***

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