▼配信50___ut side ページ11
突然飛び起きたと思ったら、今度は顔を青ざめさせてトイレへ駆け込むAの姿に俺は理解が追いついていなかった。投げ出された携帯を恐る恐る手に取って、暗闇の中明るく光る画面に目を向けた。
ut「…なんやこれ」
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【速報】大手N企業女社長自 死で倒産か?
.
そう表示された記事にさらっと目を通して水とタオルを持ってトイレに行った。
案の定扉も閉めぬまま床に倒れ込んだAの姿があって、俺は慌てて駆け寄る。どうやら吐きはしなかったらしいが、こういう時は吐いたほうが気が楽とはいうものの、無理に吐かせるのも違う気がするし。
何より食べ過ぎや乗り物酔いからのものではないから、いかんせん対応に困っていた。
ut「…A、ごめん…スマホ見た」
ぴく、と反応したAは服の袖をぎゅっと掴んで、違和感ありまくりの笑顔で俺を見上げた。
社畜時代に染みついた営業スマイルがこうも歪んで見えてしまうと怖くなってくる。
俺らは、Aの社畜時代をよく知らない。前も思い出した通り、突然倒れては俺が家に運んだりとかあったくらいで。ストーカーの時もそうだが、本当によく知らないのだ。
聞いちゃいけないきもして、逆に大丈夫かと聞けば案外あっさりと"10連勤してた"とか。労基に相談したら部下にも被害がいくから無理だと、そう淡々と語られたことがあった。
『ごめ、ごめんね鬱くん…ちょ、ちょっと頭ぐちゃぐちゃで。あの人、あのひとが、しんだってそれで』
ut「わかった。分かったから、もうええよ。深呼吸しよな」
『まってうつくん、まって、わかんない』
ut「A、吸って」
あかんなぁ、これ。
俺の方もちょっと怖くて手先が震えていることに今気づいた。このままAがしんでしまったらどうしようと頭の片隅で思っていたのがだんだんと大きくなっていく。このまま壊れてしまったらどうしよう、って。
それでも、俺だけはちゃんとしなきゃダメだと俺は慌ててスマホを取り出して一先ず通話ボタンを押した。
ut「もしもしグルちゃん?ごめん、ちょっと急いできて欲しいんやけど」
俺の声、震えてへんやろうか。
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コム@ヘラ鳥推し(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page25 id: 3acc1adf96 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - 完結お疲れ様でした!話の内容や書き方、全てにおいて好みでとても楽しく読ませていただきました。これからも頑張ってください! (2022年12月10日 11時) (レス) @page25 id: ed9e6e4b74 (このIDを非表示/違反報告)
にの - 長い間、お疲れ様でした。零さんのお話の書き方はとても丁寧で読みやすかったです。これからも応援させていただきます。 (2022年12月9日 21時) (レス) id: 11a3c31381 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - 沢山の更新嬉しいです、ありがとうございます!! (2022年11月30日 7時) (レス) @page12 id: ed9e6e4b74 (このIDを非表示/違反報告)
にの - この作品の主人公くんが大好きです。更新お待ちしてます! (2022年11月19日 18時) (レス) @page5 id: 11a3c31381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零 | 作成日時:2022年9月10日 14時