【d!】君、本性を現したね

▼悪夢の再来21___em side ページ22

彼女と出会ったのは、高校一年の春だった。


別のクラスであったが、彼女の名前はよく覚えている。
1年1組1番の赤柴A。一番最初に名前を呼ばれたあの瞬間、彼女は大きく返事をしてまっすぐな姿勢で礼をした。俺はそれにどうにも見とれてしまって、何年も昔のことなのに昨日のことのようにすんなりと思い出せる。


彼女は勉学もスポーツも欠点がなく、友達によく囲まれていた。


休み時間に図書館にこもる自分とは違って、彼女はグラウンドにいる方がよほど輝いて見えた。

委員会決めで俺は風紀委員となった。そこで初めて、俺はAと話すことになる。
俺は友達が多いわけでも少ないわけでも無いが、女子との関わりはほとんどないと言っても過言では無い。


委員会をきっかけに、少しずつ話す様になってそして夏の終わり頃。

当時3組であったトントンさんとAが仲睦まじく帰るのを目にした。あぁ仲良しだな、なんて思った。

お似合いだと思った。

だのに、




em「随分心傷してるようで」

『…さすエミ』



なんだこのザマは。


あの日、やっぱり自分は彼女達の住む世界とは訳が違うと何も見なかったことにして家に引き返した。初めて俺は夏の水やり当番をサボって、初恋は見事に散っていった。


トントンとAが手を繋いで帰るあの光景を、そこに佇む自分と燦々と降り注ぐ太陽を。

夏の終わり頃になると思い出す。



だから、今のこの季節はあまり好きでは無い。




em「大先生から聞いたわ。玉砕したん」

『ねぇその鬱伝言なんなの？？ねぇ』

em「いつもの面子で飲みにいった時酔った勢いでサラッと大先生が漏らしていたような」

『クソ』




最悪すぎるとカラッとした笑い声を出した彼女の横顔はどうにも気落ちしている様に見えて思わず目を逸らしてしまった。見てはいけない様な、そんな気分。


それに、赤柴Aと言う人間は、あまり笑わないのを俺はよく知っている。



乾いた笑いの後はとんでもなく怖い顔をしているから、あんまり見たくないんよな。



em「(はは、アホらし)」

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