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「松倉くん」
吉澤先生が隣に来て、担任の先生と少し話して、よく分からないまま荷物を持って外に出た。たくさんの人が、優しく笑いかけてくれるのは分かるけど、自分の周りに膜が張ったように音が聞こえづらくて、外に出てやっと見つけた兄の腕の中に倒れ込んだところで、記憶が途切れた。
Noel
「教室に行っているので、もうすぐ出てくると思います。慣れるまでは辛いかもしれませんけど、少しづつ、頑張っていきましょうね。さっき教室を見に行って、カウンセラーとも話したんですけど、今日は、もしかすると頑張りすぎかもしれないです」
昇降口の前で立っていると、養護教諭の七五三掛先生が声をかけてくれる。
「早退する時は、会社にお電話させていただいて大丈夫なんでしたっけ」
「はい、、よろしくお願いします。会議とかだと、繋がらないこともあるかもしれません」
「大丈夫ですよ。保育園じゃないですから、急がなくても。お手紙読ませていただいたんですけど、おそらく、毎日授業に1日入ることは、まだ難しいと思います。自習室や保健室を活用しながら、まずは毎日学校に来ることを目標に頑張りましょう」
優しく、穏やかな言葉に、焦っていた自分の心を気づかされた。その焦りが、海斗を追い詰めていたかもしれない。
「どんな小さなことでも話してください。そのための、サポート校ですから」
ニコッと笑った七五三掛先生の目線の先に、吉澤先生に殆ど背中を支えられるようにして歩いている海斗が映る。
「海斗」
声をかけて近寄ると、海斗は僕に倒れかかって、意識を落とした。
「ちょっと、頑張りすぎちゃったかもしれません」
「わかりました、家で休ませます」
「また明日、お待ちしていますね」
最後に1枚、吉澤先生がA5のプリントをくれた。
「保健室を利用したときや、僕のところに来てくれたときに、できる範囲でですが、様子を書いておきますね。綺麗にはまとめらないので、箇条書きになっちゃうと思いますけど」
「嬉しいです。僕自身も、不安ではあるので」
海斗に声をかけると薄く目を開けたので、そのまま背中を支えて車に戻った。
玄関で靴を脱ぐと、その場で過呼吸を起こした。やっと安心できるところに帰ってきて、抑えていたものが溢れ出してしまったのだろう。
「大丈夫、大丈夫。一緒にいるからね」
どれだけ時間がかかっても、君が笑顔で出かけて、帰ってくる日まで、僕がずっと一緒にいるから。大丈夫だよ。
--入学式--
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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時