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「中に入ろうか?」
優しく聞くと、小さく首を横に振る。人波に飲まれて辛くなってしまったから、人がいることが怖いのかもしれない。
「ちょっと待ってね」
引き戸を開けて、中を確認する。
「しめ、今利用してる人いる?」
「いないよー」
「おっけ。いま松倉くん来るね」
「はいはーい」
松倉くんの元に戻って、ゆっくり状況を説明する。
「中には七五三掛先生しかいないよ。人のいないところで、少し落ち着こうか」
そういうと恐る恐る足を踏み出して、中に入った。
「しめ、ベッドでもいい?」
「どうぞどうぞ。どこでも大丈夫だよ」
「ありがとー。松倉くん、端っこのベッドに座ろう」
ベッドに座らせて、隣に座る。泣き止むどころか、自分でもコントロールできないようで、過呼吸寸前の呼吸を繰り返しながら、ボロボロと涙を流していた。
「松倉くん、お薬飲んだ方がいいかな。持ってきてる?」
病院からの指示書付きで、保健室でも頓服を預かっているが、自分でできる時は自分で頑張った方がいいので一応聞いてみると、松倉くんはポケットから小さいオレンジ色のピルケースを出した。
「一回飲んで、落ち着こうね。辛いからね」
しめが紙コップに水を入れてくれて、錠剤を口に入れた松倉くんに手わたす。ごくんとそれを飲み込んでしばらくすると、少しづつ身体の力が抜けてきた。
「ちょっと横になって休もう」
そう言って肩を倒すと、ゆっくり目を閉じた。
「寝た?」
「たぶん。でも効果の長い薬じゃないから、すぐに起きると思う。俺ちょっと担任と話してくる。書くやつとかあったら預かってこっちで書かせよう」
「そうだね。教室は難しそうだね」
「でも練習もしなきゃだからなー。帰りのホームルーム一緒にいけるといいな」
急いで職員室に戻り、担任に経過を伝える。今日配布予定のプリントの束をもらって、保健室に戻った。
・・・
Shime
「松倉くん?」
しずが保健室を出てすぐに、松倉くんが身体を起こした。薬の効き目はあまり良くないみたい。
「起きた?少し落ち着いたかな」
そう聞いて正面に膝をつくと、またポロポロと涙が流れてしまった。
「一回顔洗おっか。さっぱりするかも」
そう言って、洗面台に連れて行ってタオルを渡すと、素直に顔を洗った。
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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時