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Noel
今日は朝も調子良かったし、学校から電話もなかったし、本当に調子良く過ごせたのかもしれないなんて期待していたけど、そううまくはいかないようだった。七五三掛先生から連絡をもらって、保健室に向かう。まだ入学したばかりだけど、この道はとっくに見慣れた景色になってきている。
「失礼します」
「あ、お兄さん。来ていただいてすみません。海斗くん、まだ眠っているので、相談室にどうぞ」
そう言って通された個室では吉澤先生が待っていた。
「どうぞおかけください」
吉澤先生は、今日の出来事を細かく教えてくれた。朝、危惧していた通り、やっぱり頑張りすぎが目下の課題で、海斗が自分の体力と心の状態を受け入れることが次のステップじゃないか、という話だった。
「次の通院はいつですか?」
「明日です。今は定期通院を毎週にしてもらっていて」
「そうなんですね。松倉さんは、しっかり通院もしてくださっているので、学校としても安心です。もし何か、病院から指示があれば、なんでもおっしゃってください」
「ありがとうございます」
吉澤先生にお礼を言って、保健室に戻ると、今度は七五三掛先生がいつもの紙をくれた。
「今日は、帰りのホームルームのあと、クラスの子たちが顔を見に来たんですけど、それに手を振って、最後、海斗くんが笑顔作ったようにに見えたんです。僕の思い過ごしかもしれないし、願望かもしれないけど、、お友だちと、もっと仲良く、信頼しあっていけるようになるといいですね」
その言葉を聞いて、うっかり涙が出そうになった。この2年、海斗の笑顔は、数えられるほどしか見られていないと思う。たとえ自分が見られなくても、学校で、友達と笑い合ってくれたら、そんなに嬉しいことはない。
「海斗くん、頑張っていますね」
七五三掛先生がカーテンを開けてくれて、優しく海斗を起こす。いつものようにぎゅっと抱きついて、額を肩に押し付けた。
「帰ろう」
そういうと頷いて、支度をする。鞄に変な紙が挟まっていて、不思議そうに海斗はそれを開いた。
「元太たちだ」
雑な字で書かれた手紙には、高校生男子らしいふざけたイラストと、しっかりやすめ!という優しい言葉が並んでいた。
げんた、かいと、ちゃか。
そこに並んでいた3人の名前が、海斗の将来を明るく照らしてくれるような気がした。
--新しい世界--
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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時