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「今日あんまり歩いてないから、ゆっくり立ち上がって歩いてね。待合室でお待ちください」

「はい、ありがとうございました」

病院代はそこそこかかるが、両親がしっかり保険に入れてくれていたおかげで、負担に感じることはあまりない。

「お大事にしてください」

お礼を言って、いつものように手を引いて、薬局に向かう。

「のえる」

「大丈夫だよ」

病院の外に出ると、ぎゅっと体を寄せる。大丈夫、大丈夫と言いながら薬をもらって、家に帰った。




「海斗、手洗っておいで」

頷いて、すぐに手を洗いに行く。素直な海斗は、子どもの頃から、こう言ったことで駄々を捏ねることはなかった。

「海斗にお土産があるよ」

そう言って、リビングのローテーブルに出しておいた洋服を見せる。表情はあまり変わらないけど、嬉しそうにそれを見つめていた。

「のえる、ありがとう。俺、オレンジ好き」

「そうだよね!海斗は明るい色が似合うし、好きだからどうかなって思ったんだ。これから暑くなるし、ハーフパンツ楽でいいよね」

そういうとタグをとって、几帳面に畳む。

「一回洗濯しようか?」

そう聞くと頷いて、洗濯機の横に置きに行った。

「あとね、塗り絵も買ってきました。新しいやつ出てたから」

そう言うとまた嬉しそうに塗り絵を受け取り、一枚ずつページを見ていた。色鉛筆は小さい頃に祖父母に買ってもらった100色セットを、継ぎ足し継ぎ足しで丁寧に使っている。

「塗り絵、やりたい」

「いいよ。お部屋でやる?ここでやる?」

「持ってくる」

「わかった」

ローテーブルに色鉛筆を広げて、まずは今日病院でやっていたものの続きを完成させて、そのあと新しく買ってあげたものに取り掛かっていた。

「夕飯は味噌バターコーンラーメンだよ」

そう言うと振り向いて、小さく微笑む。

「味噌バターコーンラーメン、大好き」

「そうだよね。もう少ししたら作るね」

そう言うと頷いて、また塗り絵に取り組んだ。たとえ薬に頼ってでも、この穏やかな時間を守っていきたい。それが、海斗の未来を作っていくと信じているから、海斗が次のステップに進むまで、焦らずに、待つことにしよう。





--よくある土曜日--

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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時

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