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「そうだよねぇ。家事とかもできなかっただろうし」
「とりあえずこの1本目で落ち着かなかったらもう1本打って、体重測ってから午後カロリーいれようかな」
「了解でやんす」
・・・
Kaito
息ができない。そう思って目を開けた。起きあがろうと思っても腕が動かなくて、死んでしまうかもしれないという恐怖で、身体が震える。
「海斗くんー?苦しくなっちゃったかな。一回手取るね」
手が自由に動くようになっても、自分の体じゃないみたいに動かなくて、怖くて、怖くて、息ができなくなる。
「大丈夫、大丈夫。ゆっくり深呼吸しよ」
ゆっくり、ゆっくり、そう言われても苦しくて、怖くて、涙がとまらない。
「っ、、ぅ、、や、、やだ、、っ、、」
「しんどいね、辛いね。お薬もう少し入れてもらおうね」
何を言われても頷くことができなくて、ただ涙がタオルを濡らして行く。
「海斗くん、ちょっとお薬追加するね。頭痛くなったり、気持ち悪くなったりしたら教えてねー」
「あ、、阿部ちゃん待って。先にトイレ行こうかな」
「そうだね。眠くなっちゃうかもしれないから、一回行ってこよう」
手を引かれて、スリッパを履いて、トイレに行って帰ってくる。チラッと見えた待合室に如恵留の姿はなくて、自分の中で何かが弾けるのを感じる。
「のえる、いない、、のえる、のえる、」
「如恵留くんはね、ちょっとお出かけしてるよ。大丈夫」
「やだ、おいて、いかないで、、1人にしないでよ、」
「大丈夫だよ。また戻ってくるからね。もう一回お薬いれるからね。眠くなるよー」
「やだやだ、、やめて、、帰る、、のえる」
・・・
待合室にいると思っていた如恵留の姿が見つからず、パニックを起こしてしまった。元々追加予定だった薬を入れて、優しく背中を摩る。
「大丈夫、大丈夫。心配なんだよね。でもね、如恵留くんは大丈夫だよ。海斗は1人じゃないよ」
元々持っている分離不安症の影響もあるが、海斗は何かあったらどうしようという恐怖が強く、そのせいで愛着の対象である兄や、安全基地である自宅から離れることができない。元から持っている彼の気質に、悲しい事故が重なって、海斗はひとりで前に進むことができなくなってしまった。
「のえる、、」
大好きな人の名前を呼んで、涙を流しながら目を閉じた。次に起きた時は、怖い気持ちが少しでも消えているように祈って、布団をかけ直した。
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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時