入学式 ページ2
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「海斗、、しんどいね、、気持ち悪い分吐いちゃおうね」
今日は高校の入学式だ。制服を着せて、家の前で写真を撮って、、、そんなことを考えていたのに、現実はそううまくは行かなくて、海斗はストレスと緊張からか、起きてからずっとトイレから動けずにいた。
「っ、、」
ボロボロと涙を流して、嘔吐を繰り返す。ガチガチに固まった身体が少しでも解せればと、肩や背中を優しく摩る。
「口濯いで、一回リビング行こう」
なんとかトイレから海斗を引き摺り出して、リビングに連れていく。水を用意して流しで口を濯がせたが、今度はその場で立ち尽くして、大泣きしてしまった。
「かいと、大丈夫だから、一回落ち着いて」
パニックを起こした海斗には、僕の声はなかなか届かなくて、それでも、諦めずに何度も、何度も声をかけて背中を摩る。
「のえる」
ようやく聞こえた愛しい声に、出来るだけ優しく返事をする。
「なに?」
「高校、、やっぱり、やめたい、」
これは、ここ1週間、海斗がずっと言っていることで、入学式前のオリエンテーションも当日の朝急に熱が出て行けなかったし、この環境の変化が、海斗の心と体に大きな負担になっていることは間違いなかった。でも、それを受け入れてしまえば、海斗の人生がここで止まってしまう。頑張って、それでも無理なことはたくさんある。でも僕は、海斗に高校生活を楽しんで欲しかった。最初は辛くても、必ず楽しめる日が来ると信じていた。だからこそ、人数も少なく、カウンセラーが常に見守ってくれる、サポート校を選んだのだ。ひとりでも、ふたりでも、心を許せる人を作って欲しかった。
「海斗、高校は、頑張ろう。他のことは頑張らなくていいから、高校に行くことだけ。行くだけでいいよ。教室が辛かったら、他の方法を考えてもいい。でもまずは、行ってみよう。環境を変えて、頑張ってみよう。海斗がずっと頑張ってるの分かってるよ。おうちにいた方が、安心できることも分かってる。でもね、、海斗の人生はこれからだから。この小さい部屋の中で、終わるべきじゃないと思うんだよ。やってみて、本当に無理だったら、やめていいよ。でも、まず、少しだけでいいから、頑張ってみよう」
頷くことはなかったけど、ダイニングテーブルに座って、水と薬を飲んだ。本当は朝食も食べて欲しかったけど、置いておいたコーンフレークには手をつけなかった。一度部屋に戻って制服を着ると、ネクタイを手に近付いてきた。
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イカ(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます!好きと言っていただけて、嬉しいです。これからも不定期になってしまうかもしれませんが、更新を続けていきたいと思っているので、今後もよろしくお願いします! (2022年7月15日 6時) (レス) @page46 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話、みんなあったかくて大好きです!何回も読み返すぐらいファンなので、更新楽しみにしています!! (2022年7月15日 5時) (レス) @page46 id: 660cb7e6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月27日 21時