距離 ページ21
○目黒side
さすがに、おかしい。
稽古も中盤に差し掛かった頃、今まで募っていた違和感が確信に変わった
阿部「それ渡すやつ？」
「あ、うん、」
阿部「おけ」
離れたところで交わされる2人の会話に耳をすます
ざわついた稽古場でも、聴き慣れた声はよく耳に入ってくる
Aの持っていた扇子を受け取ると、阿部くんが俺のほうに歩いてきた
…やっぱり。
阿部「目黒ー、これ小道具だって」
『あ…どうも』
目の前まで歩いてきた阿部くんに渡されて、それを受け取る
じっと手元の扇子を見つめる
稽古中、Aと全く話していない。
…正確に言えば、初日のジュースを渡した時以来。
演出家と出演者が話さないのはあり得ないけど、実際話していないのだ
絶対に話さなきゃいけない場面では、絶対に阿部くんが間を取りもってる
…今みたいに小道具を代わりに渡したり、演出の変更点を伝えたりして、俺とAが近づかないようにしてる
最初は、偶然かと思ってた
だけど、流石にここまできたら気づくだろ
遠くでぱたぱたと走り回るA
…これは、Aが望んでることじゃない
それだけは、わかる
あいつは演出の仕事が好きだから…誇りを持ってるから、こうやって逃げるみたいなことはしない
どんなに怖くても近づきたくなくても、自分の役目は果たそうとするはずなんだ
強い視線を感じて顔を上げる
ぱちっと阿部くんと目が合い、すぐに目を逸らされる
その瞬間、阿部くんに佐久間くんが話しかけにきたのを見て、俺も視線を外す
２年前から好きだったんなら、阿部くんも長い方だ
惚れた女の元彼が同じメンバーってどんな気持ちだろう
…まぁ、普通に考えて近づけたくないよな
ぐるぐると考えながら扇子を開いたり閉じたりしていると、突然稽古場にマイクの音がキーンと響いた
手元を止めて音の方を見ると、マイクを手に持つAの姿がある
「今から、全体の流れを通しで確認していきます」
落ち着いて話すAの姿は穏やかで確かに微笑んでいたけど、どこか元気がなかった
彼女は、ちゃんと寝れているんだろうか
昔から睡眠が浅くて、俺がいないと纏まった時間寝れなかった
食事だって取らずに演出の仕事に熱中するし、舞台期間はいつも体がボロボロだ
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綺羅 - すっごく、面白いです。面白くてスラスラ読めちゃいます。 (6月20日 15時) (
レス) @page37 id: 2cb09aeba9 (このIDを非表示/違反報告)
mofurin0220 - 最高ですｗ (2023年3月4日 12時) (レス) id: cad6fed786 (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - あやさん» あやさんー！！！ありがとうございます！！阿部ちゃんの動きを書くの私も楽しみです…！！あやさんの癒しを供給できるようにこれからも頑張ります！頑張れあやさん！！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - も！さん» コメントありがとうございます！！すごく嬉しいです…！！更新頑張るのでぜひ楽しんでくださいー！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！！めちゃモチベ上がりました…！やっと気づけた2人のこれからをぜひ楽しんでくれたら嬉しいです…！！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やん
| 作成日時：2020年3月28日 19時
