. ページ19
阿部「うん、２年前の人って目黒だよね」
優しくて穏やかな声がキッチンに響く
その声だけで、なぜか泣きそうになった
『…亮平くん、私まだ蓮のこと好きなのかな？』
阿部「…え？」
『だってね、蓮を見ると苦しくなるの。怖くて苦しいけど、話したいし近づきたい。…これって、好きって感情なの？』
ぽろぽろと口から言葉が溢れるのと同時に、目頭が熱くなる
今まで漠然と考えていたことも、口に出すとだんだん明確になっていく
昨日、辰哉くんにまだ好きかって聞かれてから、ずっと心に引っかかってたこと。
…好きなのかな。本当は。
ただ、拒絶されるのが怖いだけ…？
阿部「俺の考え、言ってもいい？」
亮平くんの声に、俯いていた顔を上げる
その表情は真剣で、じっと私を見つめていた
阿部「俺はそれ、恋愛感情とは違うと思う」
『違う…？』
阿部「だって、怖くて苦しいんでしょ？」
『うん』
阿部「話したいとか近づきたいっていうのは、昔の幸せな思い出があるからだよ。どうしても戻りたいって思っちゃうんだ」
落ち着いて話す亮平くんの言葉を聞いていると、そういうことか、と納得していく
…なんだ、そっか、そうなのか
『…好き、じゃなかったんだ』
そうぽつりと呟くと、レンジがピーピーと鳴った
亮平くんが手を伸ばしてレンジを開け、カレーを取り出す
阿部「あついね」
そう言って笑うのを見て、すごく安心した
その笑顔に、私も気が抜けて笑う
『ごはん、入れるね』
レンジにレトルトごはんを入れてボタンを押す
何となくそのままレンジの中を眺めていると、突然真後ろに気配を感じる
ん？
振り向こうとした瞬間、私の胸の前に腕が回った
『…亮平、くん？』
振り向かなくてもわかる
私を後ろから抱きしめたのは亮平くんで、私の首の横に顔を埋めているからサラサラの髪が頬にあたる
その表情は見えなくて、すっぽり腕に収まった私は身動きが取れずに戸惑う
どうしたんだろう…？
珍しいというか、そもそも初めての経験すぎてどうしたらいいかわからない。
阿部「…俺のこと、どう思う？」
『え？』
少し顔を上げて耳元で尋ねられた言葉に首を傾げる
ちょっとだけ見えたその瞳はいつもより大人びていて、緊張する
『優しい人…だと思う』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7685人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
綺羅 - すっごく、面白いです。面白くてスラスラ読めちゃいます。 (6月20日 15時) (
レス) @page37 id: 2cb09aeba9 (このIDを非表示/違反報告)
mofurin0220 - 最高ですｗ (2023年3月4日 12時) (レス) id: cad6fed786 (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - あやさん» あやさんー！！！ありがとうございます！！阿部ちゃんの動きを書くの私も楽しみです…！！あやさんの癒しを供給できるようにこれからも頑張ります！頑張れあやさん！！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - も！さん» コメントありがとうございます！！すごく嬉しいです…！！更新頑張るのでぜひ楽しんでくださいー！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
やん(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！！めちゃモチベ上がりました…！やっと気づけた2人のこれからをぜひ楽しんでくれたら嬉しいです…！！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: d6435a702c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やん
| 作成日時：2020年3月28日 19時
