涙時計（blue） (ページ10)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:85,872 hit

◇優しい気持ちページ10

.

結局あの後みんなでLINEを教え合って。

ちょっとだけ教室に残っておしゃべりして、
また来週ねってばいばい。

忠義はバイクで、
信ちゃんは歩きで、
美雪は親の迎えが来るって駅に向かって。

あたしはそのままビルの入口に残って
チラチラとスマホを確認しながら
大通りを歩いていく人の流れを眺めていた。

「Aちゃん！」

イヤホンから流れる音楽がちょうど途切れた時、
耳に飛び込んで来た大好きな声。

ドキドキしながら顔を上げると、
約一年半ぶりに見る優しい笑顔が
あたしの視界いっぱいに映った。

「ごめん、もしかして待った？」

まるちゃんは学校から走ってきたのか、
額にうっすらと汗を浮かべている。

『…うん、待った』

「えぇっ！そこは“全然待ってないよ♡”とか言うところちゃうの～！？」

『ふふ(笑) ジョーダンだよ』

連絡を取り合っていたとはいえ
まるちゃんと会うのは中学の卒業式以来。

まるちゃんは

背が伸びて
髪型も変わって
爽やかないい匂いがして
すごく男らしくなっていた。

カッコいい

胸がドキドキ音を立てる。

「…久しぶり、やね」

『うん…久しぶり』

「元気してたぁ？」

『当たり前じゃんっ』

二人顔を見合わせて、小さく笑い合う。

ふわふわしてて、ほこほこしてて、
もう何て表現したらいいのか分かんない。

とにかくとてもあったかくて…優しい気持ちになる。

「学校、どうやった？」

『んー…結構楽しかった』

「ほんまっ！？友達は？仲良くなれそうなん？」

『うん。気の合う子見つけたの』

「うわぁぁ良かったぁぁ……部活中もずっと心配してたんよ！今Aちゃん何してるかなぁとか、人見知り発揮してへんかなぁとか…」

『もう(笑) お母さんじゃないんだから』

あたしがポコッと腕を叩くと、
まるちゃんは中学の時よりも進化した
意味不明な変顔を決めてくるから

二人してケラケラ笑いながら
ゆっくり、ゆっくり、駅に向かって歩き出す。

.