◇思っていたより ページ9
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原因不明の息苦しさに耐えつつ50分。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く頃、
あたしと美雪はすっかり打ち解け合っていた。
『え! 美雪、あの10周年ライブ行ったの!?』
「行った行った〜!運良くチケット当たったんだぁ。しかもすっごくいい席っ」
『あたしその時金欠だったし…マジありえない…羨ましいいいい!!』
好きなアーティストが一緒。
好きなアイドルグループも一緒。
憧れてる雑誌モデルも一緒。
趣味も食べ物の好みも一緒。
どういう縁なのか、
びっくりするほど好きなものの共通点が多くて。
普段のあたしなら絶対に仲良くならない
(と言うかなれない)部類のニンゲンだけど、
美雪は特別。
適当に書き上げたデッサンを提出して、
二人並んで美術室を出る。
『にしてもさぁ。よくあたしなんかに話しかけたね』
「え? なんで?」
『だって、金髪ピアスにこんな風貌の女じゃん?
普通に話しかけにくいでしょ(笑)』
「んー…確かに。ギャルっぽい人は苦手だけど…」
そこで一度言葉を切ると、
美雪はくすっと小さな笑みを零した。
「なんかね、Aは大丈夫だって思った。
自分でもよく分からないんだけど(笑) …仲良くなれそうな気がするなぁって」
“それに優しそうだったし”なんて言って
首を傾げて覗き込んでくる美雪を見て
なんだか胸の奥がくすぐったくなった。
『…変なの』
って。
口ではそう言いながらも、
既にふわふわ表情が緩みきってしまっている。
「あ、Aちゃーんっ! 美術どーやった?あの先生ほんまつまらんやろ〜(笑)」
「おお、お疲れ〜…て、誰や。そこの黒髪美人は」
教室に戻ると出くわした忠義と信ちゃん。
美雪のこと紹介したら
めちゃくちゃびっくりしてた。
“全然気づかんかったー!ごめんなー!”
とか何とか言いながら
忠義はちゃっかり連絡先交換してるし。
信ちゃんは美雪がどストライクだったのか
ぎこちない動きで握手を求めてるし。
アホだなぁって
一緒になって笑いながら
思っていたより楽しいかも、と
そんなことを思った。
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作者名:べに x他1人 | 作成日時:2015年11月27日 21時