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『はい、もしもし。』
「あ、もしもし。片寄ですけど。あの、連絡ありがとうございました。」
『いえ。どうされましたか?』
「いや、あの、掃除ってお願いしときながら掃除機の場所とか伝えてなかったなって思って。」
彼の言葉を聞いて確かに、と納得した。
自分で家の中を把握出来てないなんて言ってたくせに、そんな事も忘れてしまっていた。
「あの、今から家の中案内するんで一度玄関行ってもらえます?」
『案内、ですか?でもどうやって…。』
「もちろん電話でですよ。ほら、早く早く。」
不思議に思いながらもその通りに玄関まで向かうと、着いたら廊下を向いて立ってくださいと言われる。
『着きましたよ。』
「じゃあいきますね。そしたらまず、すぐ左にあるところ、その扉を開けるとシューズクロークになってます。開けてください。」
『開けました。』
「そこに掃除道具もあると思うんやけど、分かります?」
『…あ、ありました。掃除機もここに。』
「良かった。そしたら次いきますね。」
それから彼は、客室にしている部屋や、洗面所、お手洗いなど細かく教えてくれた。
キッチンの時には、ちゃんと包丁や調味料のしまってある場所まで。
最後に残るのは奥の部屋だけ。
だけど、この時はそこを案内されることはなかった。
「あと奥の部屋なんですけど、」
『ここ、ですね。』
「待って!そこは絶対入らんといてください。」
『…え?』
「ほら、あの自分の部屋やから見られたら恥ずかしいっていうか。」
『分かりました。ここは入りません。』
「ありがとうございます。そしたら俺、18時には帰ると思うんでお願いします。」
電話を切ると急に静けさが目立つ。
人間って面白いもので、入るなと言われると入りたくてうずうずしてしまう。
よく、触らないでくださいと張り紙をされた場所を触ってしまいたくなるのと全く同じ衝動に今駆られていた。
もちろん、そんな事はしない。
そんな事をしたら歴とした職務違反になってしまう。
『しかし広い家だな、ここ。』
自分の部屋の何倍も掃除機をかけるのに時間がかかる。
やっと全部の部屋をかけ終えた時にはもう、時刻は17時を回っていた。
まだ夕食の支度が残っていたから、急いで冷蔵庫を開けてあるものでいくつか作り、家主の帰りを待った。
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えすちゃん(プロフ) - 続きが気になります! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 6b458d06dd (このIDを非表示/違反報告)
こじゃる(プロフ) - また更新が再開されるのを楽しみにしています。 (2018年9月15日 21時) (レス) id: 39b5516bcc (このIDを非表示/違反報告)
emry(プロフ) - pomuさん» pomuさん、ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!!これからも頑張りますね♪ (2018年7月24日 14時) (レス) id: ed62ca3d67 (このIDを非表示/違反報告)
pomu(プロフ) - はじめまして!!作品毎日楽しみにしています! (2018年7月23日 14時) (レス) id: 356e20fead (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emry | 作成日時:2018年7月10日 1時