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「えっと、青空さん、でしたよね?珍しい苗字ですよね、青空って。どこの生まれなんですか?」
『愛知です。』
「へえ、じゃあ愛知には結構いるんですかね、青空さんって。」
『あまりいないみたいです。』
「あ、そうなんや。…片寄も結構珍しいねって言われるんやけど、青空さんに比べたら全然っすね。」
『そうなんですか。』
出してもらったお茶を飲もうとした時、ふと視界に入った彼の顔は、明らかに困っているように見えた。
それもそのはず。
なんせ一生懸命話をしようとしてくれる彼に応えられていないから。
私だって困らせたいわけではない。
でも今の私の持つスキルでは、対応できないのが現状。
寧ろ返事をしているだけ有り難いと思ってほしいくらいだった。
「えっと…、」
『あの、何をしたらいいでしょうか。』
「え?」
『仕事内容です。雨宮さんからは週三日、家事全般をと聞いていますが、それで宜しいでしょうか?』
「あ、はい。」
『分かりました。それと、』
「それと?」
『無理して接していただかなくて結構です。お仕事で伺ってるだけなので。時間の分、確りお仕事させていただきますから。』
「…分かりました。」
お金持ちの暇潰しには付き合いたくない。
この時そう思ったのは、彼についての情報量が少なかったからだ。
片寄涼太、23歳、男、出身は大阪府、一人暮らし。
本来ならもっと細かく書かれているはずの基本情報が、これに住所と電話番号を足した程度しか記載がない。
彼は今流行りの若手IT社長かなんかで、仕事と遊びに明け暮れる毎日を過ごし、家の事まで手が回らないから家政婦を雇った、そんなところだろうと思っていた。
でも、そんな風に見えないのも確かで。
一体この人は何者なんだろう。
「Aちゃん、どうだった?」
『所長、お疲れ様です。どうって、特に問題はありません。明日から行きます。あの、彼って何者なんですか?』
「何者って、なんか大袈裟ね。普通の男の子よ。Aちゃんと同じ、普通の。」
『…私と同じではないですよ。私は普通なんかじゃないですから。』
会社へ戻り今日の記録を作成していると、雨宮さんがやってきた。
私は至って真剣に何者かと聞いたのだけど、雨宮さんは可笑しそうに笑って、でも普通の男の子と説明した表情はどこか悲し気なように感じた。
普通。
普通って一番憧れる。
私も普通だったら、もっと幸せだったかもしれない。
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えすちゃん(プロフ) - 続きが気になります! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 6b458d06dd (このIDを非表示/違反報告)
こじゃる(プロフ) - また更新が再開されるのを楽しみにしています。 (2018年9月15日 21時) (レス) id: 39b5516bcc (このIDを非表示/違反報告)
emry(プロフ) - pomuさん» pomuさん、ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!!これからも頑張りますね♪ (2018年7月24日 14時) (レス) id: ed62ca3d67 (このIDを非表示/違反報告)
pomu(プロフ) - はじめまして!!作品毎日楽しみにしています! (2018年7月23日 14時) (レス) id: 356e20fead (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emry | 作成日時:2018年7月10日 1時