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いくら昨日玲於と会っていたからって、そんなすぐに打ち解けるようなタイプではない。
人見知り通り越して、人嫌いの彼女が、俺よりも玲於を選ぶとは思ってもみなかった。
龍「思ってたより普通の子やん。なんか玲於に懐いてへん?」
「…昨日会ったからっしょ。」
龍「うわ、急に機嫌悪いやん。涼太もしかしてヤキモチか。」
「ち、違うわ!ただ、…なんか俺距離縮める為にまあまあ頑張ったんやけどなって。ただそれだけ。」
龍「ふーん。それだけねえ。」
龍友くんのその意味あり気な顔は、確実に信じてない時だ。
けどこの変な焦りは、あながちヤキモチという言葉は間違っていないとも思わせる。
無性に喉が乾いて冷蔵庫からまだ新品の水を取り出した。
それを開けようとした時、焦りが全く別物へと変わっていった。
「…っ、」
龍「開けようか?」
「いい。大丈夫、開けられる。」
龍「ん、そっか。」
「っ、さっきまでは平気やったのに。…ごめん龍友くん、開けてくれる?」
龍「最近のペットボトルは蓋硬いよな。」
さっきまで何ともなかった左手に力が入らない。
流石にキャップを開けられないなんてことはなかったのに、今はそれすら出来なくて。
少しずつ、自分の身体が蝕まれていく。
発症しない可能性が、どんどん低くなっていく。
龍「なあ、本当にあの子には言わんでええの?」
「うん。…知られたくない。」
龍「せやけどもしかしたら色々と協力してくれるかもしれへんやん。言っといた方がええんちゃう?」
「もし、どうしようもなくなったら言おうと思ってる。このままじゃ隠しきれへんなって時に、打ち明けようと思って。」
龍「…涼太がええならええけどさ。でも、」
玲「ただいまー。重いよー、疲れたー。」
でも、なんだろう。
龍友くんの言いたいことが、この時の俺には分からなかった。
有名人である事も、病気である事も、全部隠しておきたいんだ。
今は、今だけの俺を知っててほしい。
「ごめんね、疲れたやろ。ありがとう。」
『いえ、大丈夫です。佐野さんがほとんど持ってくれたので。』
「…そっか。玲於ああ見えてマッチョやしね。」
『…なにか、ありましたか?』
「え?」
『勘違いだったらごめんなさい。なんか、さっきより元気がないような気がしたものですから。』
こんな小さな変化にも気付いてくれるなんて、彼女はどこまで俺の心を持ってくのだろう。
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えすちゃん(プロフ) - 続きが気になります! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 6b458d06dd (このIDを非表示/違反報告)
こじゃる(プロフ) - また更新が再開されるのを楽しみにしています。 (2018年9月15日 21時) (レス) id: 39b5516bcc (このIDを非表示/違反報告)
emry(プロフ) - pomuさん» pomuさん、ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!!これからも頑張りますね♪ (2018年7月24日 14時) (レス) id: ed62ca3d67 (このIDを非表示/違反報告)
pomu(プロフ) - はじめまして!!作品毎日楽しみにしています! (2018年7月23日 14時) (レス) id: 356e20fead (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emry | 作成日時:2018年7月10日 1時