● 11 ページ11
.
「いや、あの。…青空さんって、俺の事知ってます、か？」
『…は？』
「だから、俺が誰なのか知ってるかなって…。」
『まあ、はい。』
「え！？知ってはるんですか、俺の事！」
『片寄涼太さん、23歳男性、出身は大阪府。現在はこちらのお宅で一人暮らし。以上です。』
「…え？」
俺の質問に、迷うことなくはい、と答えた彼女の反応に、ついオーバーにリアクションをとってしまった事が、彼女の回答を聞いて物凄く恥ずかしくなった。
俺が聞きたかったのは、そういう事じゃないんだけど。
「いや、違くてあの、そういうんじゃなくて…。」
『そういうんじゃない、と申しますと？』
「そう言われると…。」
『あなたがどういう人物なのか、ということでしょうか。それでしたら申し訳ありませんが、お答え出来兼ねます。』
「え？」
『片寄さんの事を私はよく知りませんから。例えばお仕事、趣味、そういう自身の事に関しては全く。業務に関係のない事は、必要ないので把握するつもりもありません。なので私にそれを聞いても、意味無いかと。』
あれだ、どっかで見たことあると思ったら、ドラマだ。
家政婦の何とかってやつ。
こんな人、本当に存在するんだな。
表情一つ変えずにそう話す彼女に圧倒されてしまう。
「あ、いや。その、歳も近いし、なんであなたを雇ってるんやろうかって思われてたりするんやないかと思って、聞いただけなんで…。」
『そうですか。まあ確かに、利用される方の中では珍しいケースだと思いますが、それぞれ理由は様々ですから。別に聞こうとも思っていませんし。』
「そう、ですか。どう思われてるんやろって気になっちゃって。呼び止めてすみませんでした。」
ここまで興味を持たれないと、騒ぎになる心配よりも切ない気持ちが上回る。
矛盾しているのは分かってるけど、俺の想像とはるかに違う結末だった。
でも今思えば、これがAに惹かれた本当に一番最初のきっかけだったのかもしれない。
この後のAの言葉が、きっと。
『どうって、どうも思っていませんよ。私にとってはお客様以外の何物でもありませんから。…強いて言うなら、』
「強いて言うなら、？」
『普通の男の人、です。では、私はこれで失礼します。』
普通の男の人。
そんな普通の言葉が、俺の心に響いた。
芸能人だという贔屓も、病気だという同情も無い、何の変哲もない普通という表現が、思いの外嬉しかったんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 151人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えすちゃん(プロフ) - 続きが気になります! (2018年10月16日 23時) (
レス) id: 6b458d06dd (このIDを非表示/違反報告)
こじゃる(プロフ) - また更新が再開されるのを楽しみにしています。 (2018年9月15日 21時) (レス) id: 39b5516bcc (このIDを非表示/違反報告)
emry(プロフ) - pomuさん» pomuさん、ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！！これからも頑張りますね♪ (2018年7月24日 14時) (レス) id: ed62ca3d67 (このIDを非表示/違反報告)
pomu(プロフ) - はじめまして！！作品毎日楽しみにしています！ (2018年7月23日 14時) (レス) id: 356e20fead (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：emry | 作成日時：2018年7月10日 1時
