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佐野side
付き合って1年。あの事故が起こってほぼ1年
俺の恋人の誠也くんはまだ目を覚まさへん
約束したやん。記念日とか誕生日は忘れず、一緒に祝おなって
分かってる。誰も悪ない。悪いのは車を運転してた人
今すぐにでも場所を突き止めてなんか言ってやりたいけど誠也くんは絶対
「俺のためなんかにそんなんせんでええから、そばにおってや晶哉」
っていうに決まってるから何もできひん
そんなやり場のない思いを逃すように深呼吸を一つ
誠也くんのためにならへんことは絶対やらへん、そう自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる
目の前には綺麗な顔をして眠っている誠也くん
でもその綺麗な顔にはほっぺやおでこ、口元とかところどころに傷がついとって
守られへんくてほんまにごめんなさい。俺が助けられてもうた、俺のせいで誠也くんが...
そんなん考えてたら思わず誠也くんの痛々しい頬に手が伸びる
このままキスしたら眠り姫みたいに目を覚ましてくれる？
そんなことを考えた自分に少しびっくりしたけどもしかしたら...と思って誠也くんの唇に自分の唇を重ねた
...誠也くんとのキスやのに、いつもなら嬉しいはずやのにそこには誠也くんの意思がなくて
全く嬉しくない。むしろ悲しかった、誠也くんの照れたような、嬉しそうな顔も見られへん
もしかしたら...と思ったものの俺がキスなんてしたところで
誠也くんが目を覚ますわけなんかなくてぴたりとも動かへん
勝手にチューせんとって！晶哉のアホ！って言ってや...
俺が本物の王子様やったら目を覚ましてくれたん？
そんなあほらしいことを考えては自分に呆れる
でもそんなことを考えてな正気を保ってられるような気がせんくて、涙が溢れてくるような気がして
すぐそばにおるのにそこには誠也くんの温もりを感じられへんくて、生きてる感じさえもせえへんくて
めっちゃ遠くに、手の届かへん場所に誠也くんがおる気がした
続く
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作者名：sueami824 | 作成日時：2023年10月26日 20時
