涙を拭いて #3 (ページ40)

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「ポケットのお薬飲んでごらん？自分でできるかな」

声をかけながら、コンビニに車を停めて、後ろのドアを開ける。

「海斗、大丈夫だよ。落ち着いて、お薬飲もう」

泣き噦る海斗の口に薬を入れて、落ち着くのを待つ。やっぱり、自分で飲むのはまだ難しそうだ。

「大丈夫大丈夫。早くおうち帰ろうね。お隣に座る？」

その言葉には首を横に振って、シートベルトをしたまま、ブランケットを頭から被った。

「そのまま行こうか。大丈夫だよ、晴れてるし、安全運転するからね」

車に乗れないと学校にも行けないし、デイだって厳しい。だからこればっかりは、辛くても、頑張ってもらうしかないかな。

「海斗？」

薬が効いてきたのか、突然海斗の鳴き声が聞こえなくなって、コツンと頭が窓に当たる音がした。

「寝ちゃったかな」

フラッシュバックのこともあるから、頓服も今までよりも少し強いものになってる。だから薬を飲んだ後は眠ってしまうことが多い。

「もう着くからね」

海斗は、普通の人よりも、安心できる状況とか、環境が少ないんだと思う。だから疲れるし、怖くなる。それは海斗が持って生まれたもので、これからも、海斗はその感覚と共に生きていかなきゃいけないから、海斗の世界の内側にいる俺が、広い世界の中から、海斗の安心を見つけてあげなくちゃいけないんだ。

「海斗、着いたよ」

肩を揺すって起こしても、薬が強くてぼんやりしている。だからと言って車でこのまま寝かせておくこともできないから、両手を引いて、ゆっくり歩かせる。

「段差あるよ、気をつけて」

本当に眠くて堪らないようで、殆ど目を閉じてカクカクと首が揺れる。

「ソファーまで頑張って」

玄関に座らせて、靴を脱がせて、ソファーに座らせる。

「海斗、おかえり」

そういうと、言葉は出なかったけど、海斗は小さく頷いた。すごく眠そうだけど、気持ちは落ち着いてるみたいで良かった。

「お昼ご飯まで寝てていいよ」

背中を倒して摩っていると、またすぐに寝息が聞こえる。体力も落ちているから、少しづつだね。