涙を拭いて #3 (ページ39)

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結局、薬は今までのものまでは戻せないまま、退院することになった。少しづつ減らしているから時間がかかってしまうし、本来の生活環境の中で、慣らしていった方がいいだろうということになった。少しぼんやりしているところはあるけど、よく眠れるようになったし、食事もある程度摂れている。ただ、感情のコントロールは苦手なままで、急に泣き出してしまうし、分離不安は以前よりも強く出ている気がする。それでも、安心できるお友達ができたことはいい傾向だね、と阿部先生は言ってくれた。

「海斗くん、月曜日の夕方、待ってるね」

退院前の診察で、阿部先生の言葉に頷く。明日は土日で休みだから、僕は今日も休みをとった。今日の午後は吉澤先生が家に来てくれることになってるし、少しづつ、体力を戻して、なるべく早く学校に戻れるといいな。

「阿部先生」

珍しく、海斗が口を開く。

「ん？なに？」

「学校は、いつから、行っていいですか」

「んー、そうだね。海斗くんが行けそうだなって思ったら、行っても大丈夫だよ。でもね、久しぶりに行くと疲れちゃうかもしれないから、学校の先生にも相談してみようね。今日、お家に来てくれるんだもんね」

そう聞くと小さく頷いた。やっぱり、学校に行きたいと思ってるんだね。

「学校に行くときは、ポケットのお薬も忘れないようにね。心配だなって思ったら、飲んでいいからね」

海斗はまだ、自分で頓服をを飲む判断をすることができない。不安がピークになる前に飲めるといいんだけど、海斗はキャパがないから、すぐにいっぱいいっぱいになってしまって、薬を自分で飲むという思考に至らない。

「まずは、お家でゆっくりして、3食ちゃんと食べて、少しお散歩しようね。学校に行く時と、同じ時間に起きられるといいね」

薬局で薬をもらって、家に帰る。外にはスムーズに出られるようになったけど、やっぱり駐車場とか道沿いは緊張するみたいで、ギュッと僕の手を握っていた。

「車出すね」

順調かなと思っていたけど、そう上手くはいかなくて、車とすれ違うたびに海斗が息を詰めるのが分かる。少しでも視覚情報が少なくなるように後部座席に座らせていたけど、海斗はあっという間にボロボロと涙を流して、呼吸を乱してしまった。