涙を拭いて #3 (ページ37)

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Noel

「海斗、元太くんたちが来てくれたんだって。今日のお散歩、一緒に行ってくれるんだって」

そう声をかけると、ゆっくり顔を上げる。毎日、お散歩の時間が近づくと、気持ちが落ち込んでしまって、ベッドの上で膝を抱えていることが多い。

「お支度しよう。今日は僕も一緒に行くし、みんなで行けば、怖くないね」

そう言って、それでもあまり動けない海斗に上着を着せて、靴下と、スニーカーも履かせる。

「帽子はいらない？」

そう聞くと小さく頷いて、でもその手はギュッと僕の腕を掴んでいた。

「大丈夫、大丈夫」

震える背中を摩っていると、ノックがあって、佐久間さんが顔を出す。

「お友だちきてくれたよー。お部屋から出れそうかな」

「海斗、いこう」

手を引いて立ち上がる。不安そうな足取りではあるけど、お友だちには会いたいんだね。

「かいと！」

病室から出ると、元太くんが嬉しそうに駆け寄ってくれて、自然に海斗の両手を取る。

「会いたかったよー。大丈夫？しんどくない？」

「だい、じょうぶ、」

「くらー、無理すんなよー」

「うん、ありがとう」

ぎこちないながらも、お友だちと会話をする海斗を見て驚いた。調子が悪いと、僕とも会話が繋がらないこともあるから。それは、隣にいた佐久間さんも同じだったようで、僕にだけ聞こえるように小さな声で、素敵なお友だちができたね、と言ってくれた。

「外行けるー？俺、サッカーボール持ってきた！」

「お前いつも持ってるだろー」

「元太、病院なんだから、気をつけなきゃダメだよ」

「わかってるよー。ね、かいと、ママがクッキー焼いてくれたんだよ。一緒に食べようよ」

その言葉に頷いて、元太くんに手を引かれるまま、歩き始めた。このまま外まで行けちゃうんじゃないかと思ったけど、やっぱり、自動ドアの前で海斗の足が止まった。

「松倉、大丈夫？」

「ちが、あのね、、待って、」

「大丈夫だから、ゆっくりでいいよ」

「かいと、、」

「よし、じゃあさ。俺と元太は先に外いるよ。な、元太。いくぞ」

そう言って海人くんが乱暴に元太くんを外に連れ出す。きっと、元太くんのストレートな言葉で、海斗が焦らないようにと気遣ってくれたんだと思う。