涙を拭いて #3 (ページ35)

今日:24 hit、昨日:10 hit、合計:35,352 hit

でも、まだ⑤ ページ35

・

Miyachika

「ねー、もーげんかいー、かいとに会いに行こうよー」

あの事故の日からもうすぐ2週間。松倉に送ったメッセージは既読になるものの、返信はなかった。

「連絡が来ないんだもん、きっと調子悪いんだよ。まだ退院できないんだよ、きっと」

「だからって何もできないのやだよ。かいと、寂しがりやじゃん。だからさ、会えなくてもいいから、来たよって、会いたいよって伝えたいんだよ」

元太は、言葉を選ばない。元々優しいから優しい言葉しか出てこないけど、元太は思ったことを、思った順番に口に出す。たまに何言ってるのかよく分からないことはあるけど、元太の考えはいつだって相手のことを想ってる。考えて考えて、何も話せない俺とは大違いだ。

「ねーー病院行ってみようよー。お見舞いだけもってさ」

言い返せなくなって、海人を見ると、スマホに落としていた目線が上がる。

「行ってみても、いいんじゃない？病院行って、受付で聞いてみるくらいなら、迷惑にはならないっしょ」

「そうだよ！ね、ちゃか。土曜日一緒に行こうよ」

「わかった。行くだけ、行ってみよう」

「やったー！」

無邪気に喜ぶ元太を見て、すこし気持ちが和む。同級生のはずだけど、元太は弟みたいで、でもとても頼もしくて、俺も海人も、そして松倉も、この明るさと、優しさに救われてるんだと思う。

「ママにクッキー焼いてもらう！」

「松倉、絵が好きだから、本屋さんで綺麗な絵本買っていこうかな」

「あ、それいいね。割り勘しよーぜ。今日の放課後俺行けるよー」

・・・

「おはよう」

あっという間に時間が過ぎて、自転車で元太と病院へ向かう。海人はお母さんに送ってもらうそうだ。

「おはよー。かいとにあえるかなー」

受付をして、病棟に面会が可能かを聞いてもらう。しばらく待っていると、看護師さんが来るから、ちょっと待っていてください、と言われた。

「どういうことだろ」

「でも、ここでダメですって言われないんだから、可能性あるんじゃないの。元気100倍ってわけじゃないだろうけど」

とにかく俺たちにできることは言われるがままに動くことで、受付にあるベンチに3人で座って待っていた。