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「違うよ、、あのね、帰るの、、おうち、っ、、外は、だめ、、のえる、、のえるが、車に、、っ、、だ、めだめ、、だめなの、、」
支離滅裂な海斗の言葉に不安を覚えながらも、佐久間さんが用意してくれた薬を飲ませるために声をかける。
「海斗、お薬飲むよ。いっかい離れるね」
顔を上げてくれないと薬が飲めないから、佐久間さんにも手伝ってもらって一旦海斗の身体を離す。その途端に海斗はまたパニックを起こして、僕から離れまいと暴れてしまう。
「ヘルプおねがいしまーす」
佐久間さんがナースコールをかけるとすぐに、渡辺さんがやってくる。
「如恵留くん、一回預かるから、廊下で待っててね。あ、ご飯終わってないじゃん。デイルームで食べててね」
その言葉になんとか頷いて、泣き噦る海斗から離れる。トレーを持って部屋から出ると、海斗の悲鳴が廊下に響いた。
・・・
Sakuma
「いやっ、、やだ、、のえる、、！置いて行かないで、、やだ、、のえる、、のえる、、いやぁぁああああああ」
パニックを起こした海斗を押さえて、拘束帯を締める。本当はこんなことしたくない。だけど、海斗が怪我をしたり、治療ができない方が、海斗にとってデメリットが大きいから。
「あべちゃん先生くるからねー、もう少しだよー」
「のえる、、のえる、、の、え、、のえる、」
海斗は元々、分離不安が強い。幼い頃から通院していたのも、分離不安から来る心身の不調を治療するためだった。発達的にゆっくりな面もあるけど、海斗は優しくて、真面目で、器用な子。少し繊細すぎる心が、外の世界に対する恐怖を作り上げた。
「お待たせ」
声も聞こえないくらい泣き叫ぶ海斗に、あべちゃんは優しく話しかける。
「海斗くん、あべちゃん先生です。夜ご飯、少し食べられたかな。ちょっと辛いからね、注射でお薬入れようね。ちょっと痛いけど頑張ろう」
頓服では対応できないと判断して、皮下注射を選択した。強い薬を使い続けたくはないけど、この状態を続けていたら、海斗も、如恵留くんも壊れてしまう。
「右手借りるね。スースーするよ。動かないよー」
手早く処置をして、涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭く。
「んー、、」
「大丈夫、大丈夫。すぐ楽になるからね」
「のえる、、」
「如恵留くんは大丈夫だよ。ご飯食べてるから、待っててあげようね」
「ひとり、やだ、、」
「そっか、そうだよね。お家に帰れるように、先生たちと頑張ろうね」
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作者名：イカ | 作成日時：2022年8月28日 23時
