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阿部先生が海斗に説明している間に、佐久間さんが僕に説明してくれる。同意書にサインをしてから、海斗に向き合った。
「海斗、頑張れそう？」
「如恵留くんにも、一緒にいてもらおうか」
少し時間がかかったけど、海斗は小さく頷いて、自分で涙を拭いた。
「偉いね。頑張れそうだね。よし、じゃあ、早めにやっちゃおう」
海斗のベッドをフラットにして、身体を押さえる。
「如恵留くん、右手お願いします」
「はい」
納得して頷いたけど、やっぱり海斗は怖いみたいで、何も言わないけど、涙を流してブルブルと震えている。
「頑張ろうね、痛くないように鼻にお薬つけるね」
抵抗はしないけど身体に力が入りすぎていて、呼吸が浅い。
「チューブ入れるよー。ちょっとだけ痛いけどね、ここ越えたら大丈夫だからね〜、あ、上手だよー。一回ごっくんできるかな？頑張れ頑張れ」
なんとか嚥下することができて、チューブを顔に固定する。見た目は痛々しくて可哀想だけど、これできちんと栄養が摂れるなら、それに越したことはない。
「よーし、できた。お腹エコーで見せてね」
無事にチューブが入ったことを確認する。海斗は疲れてしまったのか、瞼が重そうだった。
「一回休もうね。夜ご飯の時間に入れようね」
手を握ったまま額を摩っていると、海斗はゆっくり目を閉じる。また起こしてしまっても可哀想なので、そのまま手を握っていることにした。
夕食の注入をして、海斗は不思議そうな顔をしていたけど、無理に食べさせるより随分穏やかで、歯を磨いてあげて、寝かしつけるのもスムーズだった。
「おやすみ」
小さな声でもう一度声をかけて、静かに病室を出る。ナースステーションを通ると、阿部先生に声をかけられた。
「海斗くん、少し落ち着きましたね。味覚障害のこと、本当はもっと検査をして、どの味がつらいのかを調べたいんだけど、ちょっと今は難しいので、とにかく体力回復を優先して、チューブを留置しました。1週間くらいで抜けるように、計画を立てて少しづつ練習していくね」
「わかりました。よろしくお願いします」
「中学校と連絡はとれましたか？」
「はい。長く入院になりそうなことは伝えて、院内学級の件も伝えました。今週、一度荷物を取りに行きます」
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作者名：イカ | 作成日時：2022年8月28日 23時
