涙を拭いて #3 (ページ29)

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少しだけ体の力を抜いたタイミングで立たせて、病棟に戻る。ドアを潜って、ナースステーションの前を通ると、海斗は突然パニックを起こしてしまった。

「いやぁぁぁあっ、、や、、ごめ、なさ、、」

「かいとー、大丈夫だからね。一回座っちゃおう。お薬飲もうね」

頓服を口に入れて、力が抜けるのを待つ。そのまま落ち着くかと思ったが、気持ちが悪くなってしまったのか、その場で戻してしまった。

「っ、、ごめ、ごめなさ、、っ、うぅ、、」

「気持ち悪かったかな。大丈夫だからね、きれいにしようね」

その場は応援に来てくれた同僚に頼んで、海斗をシャワールームに連れて行く。

「お着替えするね」

声をかけながら服を脱がせて、顔や手を綺麗に洗う。届けてもらった服に着替えさせて、ベッドに戻した。

「っ、、ぅ、、っ、く、」

頓服の効きが悪くて、海斗はずっと涙を止められずにいる。少し話して落ち着かせたいと思ったけど、それも難しそうだ。だからといって、十分に薬を使っている海斗にできることは正直少ない。

「海斗、よく頑張ったね。下まで行けて、偉かったよ。のえるくんきたら、いっぱいぎゅーってしてもらおうね」

のえる、というワードに反応するかと思ったが、その余裕もないようで、ただぼんやりと目を開けて、迫り来る恐怖と闘っていた。

「失礼します」

暫くすると、あべちゃんがやってくる。手に持ったトレーには、睡眠導入剤が乗っていた。

「ちょっと、眠った方がいいかな」

「そうだねー。辛いと思う」

「海斗くん、身体も疲れちゃったし、こころもいっぱいになっちゃったね。だからね、一回眠って、リセットしよう」

優しく抱き起こして、薬を飲ませる。そして暫くすると、海斗はゆっくり目を閉じた。

・・・

Kaito

疲れた。寝てたはずなのに、目を開けたらすごく身体が疲れていて、なんでこうなってしまったのか思い出せない。ただただ、体もこころも疲れていて、溢れてくる涙を拭う元気もなかった。

「海斗、入るね」

さっくんの声がして、引き戸が開く。起きたことに、気づいてくれたのかな。

「結構眠れたね」

いつもと同じように、熱を測ったり、血圧を測ったりして、トイレに行こう、と言ってくれる。

「一緒に行っておこうね」

正直、体が疲れていて起き上がるのも嫌だったけど、さっくんが支えてくれて、なんとか行って、帰ってくることができた。