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「かいとー。お散歩いこー」
今日からお散歩が始まるけど、正直不安で朝から落ち着かないし、朝ごはんもあんまり食べられなかった。
「頑張れる？」
さっくんの言葉に頷いたけど、その拍子にやっぱり涙がこぼれてしまった。
「今日は最初だから、行けるところまで行って、ちょっと休憩して帰ってこようね」
病棟用のスリッパじゃなくて、外に行くためにスニーカーを履いて、上着も羽織る。
「よし、行こう」
「さっくん、、」
どうしても怖くて、さっくんに手を伸ばすと、笑顔でその手を握ってくれる。
「手繋いで行こうか。そしたらちょっと安心できる？」
その言葉に大きく頷いて、ゆっくり病室を出た。
「出かける時は、ナースステーションに行ってきますしてから行こうね。自分で言えるかな」
背中を押されて、ナースステーションのカウンターの前に立つ。暫く何も言えずにいると、奥からこーじくんが来てくれた。
「海斗くん？どーした？」
「あの、ね」
「ゆっくりでいいよ」
「お散歩、いってきます」
「はい、わかりました。気をつけてね」
ちゃんと言えて偉いって、しょっぴーとさっくんがいっぱい褒めてくれて、少し、気持ちが落ち着いた。
「エレベーターで行こうね」
エレベーターに乗ったくらいから、頭の中が「こわい」でいっぱいになっちゃって、さっくんが話しかけてくれたけど、正直あまり理解できなかった。外が近づくにつれて、苦しくなって、ふらふらして、気持ち悪くて、立っていることができなくなってしまった。
・・・
Sakuma
「っ、、、」
病棟を出て、エレベーターに乗ったところまでは順調だった。でも外につながる自動ドアの前に来ると、海斗は頭を抱えて、しゃがみ込んでしまった。
「海斗、ベンチ座ろ。ちょっとだけ頑張れー」
脇を支えて、人通りの少ない廊下のベンチに座らせる。ボロボロと涙を流して、顔を真っ青にしている。今日はここまでかな。
「っ、、」
海斗の表情が変わる。フラッシュバックだ。
「海斗、大丈夫だよ。周り見てごらん」
恐ろしい記憶から帰ってこれるように身体を摩って声をかける。
「ぅ、、うぅ、、」
気持ちも、体もコントロールできなくなってしまった海斗は苦しそうに唸って、全ての刺激から身を守るように体に力を入れる。
「ちょっと落ち着いたらお部屋戻ろうね」
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作者名：イカ | 作成日時：2022年8月28日 23時
