涙を拭いて #3 (ページ23)

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強い薬を使っても効きが悪くて、とにかく今は、落ち着くまで危険がないように見守りましょう、と言うことになった。お腹も下してしまっているし、強い薬を使いづけることは海斗のためにならない。

「佐久間、とりあえず帰りなよ。明日も朝からでしょ」

「そーだね、、海斗のこと、よろしくね」

「当たり前」

夜勤のスタッフに託して、俺も仕方なく帰路についた。

・・・

翌朝出勤すると、海斗は憔悴していて、それでも時節襲って来る恐怖に身体を震わせていた。

「おはよー」

「佐久間おはよう。これ、海斗くんの申し送り」

「ありがとう。どうだった？」

「かなりしんどい。薬の効きが悪くてさ。下しちゃってるし、辛いよ。殆ど寝てないと思う」

「今回お腹にきちゃってるんだねぇ、、」

「今日はね、俺、外来代わってもらって、１日海斗につけるんだ。だから、なんとか寝かせるよ」

「そうだなー。身体が限界だよ」

お腹の調子が悪いから、朝ごはんはスキップで、泣く元気も無くなってしまった海斗の視界に入る。

「海斗、おはよう。夜も辛かったんだね。今日は1日ずっとさっくん一緒にいるからね」

そう言うと腕を伸ばして、俺の服を掴む。そして、小さな声で、こわい、と言った。

「怖いんだね。教えてくれて、ありがとう。海斗、汗いっぱいかいたね。風邪ひいちゃうから、身体拭いてお着替えしようか。如恵留くんたくさんパジャマ持ってきてくれたから選ぼうね。おトイレも行こうね」

排泄は間に合わなかったけど、それには触れずに、清拭と着替えを済ませる。落ち着いたかなと思っていた矢先、またフラッシュバックが起きる。頭を抱えて、事故の記憶からなんとか逃げようと暴れる。ちょうど拘束を解いていた時だったから、危険がないようにそのまま抱きしめた。

「かいとー、大丈夫だよー。さっくんが一緒にいるからね、なんも怖いことないよ」

「っ、、、」

「身体の力抜いてごらん？お薬入ってるからね、海斗が寝たいなぁって思ったら、ぐっすり眠れるよ。まだ怖いかもしれないけどね、ゆっくり横になって、さっくんと深呼吸しようね」

ベッドに寝かせて、背中を摩る。身体の緊張が解れるようにマッサージしていると、見開いていた目が少しづつトロンとしてくる。

「大丈夫だからね」

やっと、海斗の体から力が抜ける。そのまま海斗は、夕方まで眠っていた。