涙を拭いて #3 (ページ22)

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『うぅ、、』

海斗の泣き声が聞こえて来る。廊下でそのまま待っていると、他の看護師さんに声をかけられた。

「お兄さん、海斗くんね、少し時間かかりそうなの。だから、お兄さん一回帰って、ご飯食べたりしてきたらどうかな。入院の用意もお願いしたいので」

そう言われて、わかりました、と立ち上がる。自分でも、一回帰って、自分を立て直したほうがいいことはわかる。とにかく、海斗のことを頼んで車に戻った。

・・・

Sakuma

「かいとー、お腹痛いかな。大丈夫だからね、一回おトイレ行こうね」

最初に着替えさせた時点で紙パンツにしていた。調子の悪い時は排泄が難しくなってしまうこともあるから、紙パンツを使うこと自体は珍しくない。

「立てるかなー？」

泣き噦る海斗を立たせて、トイレに向かう。痛みが強いみたいで、海斗は身体を折り曲げて、殆ど引き摺るようにトイレに連れて行った。

「んん、、」

「さっくんお外にいるね。何かあったら、ボタンを押してね」

汚れ物を処理して、落ち着くのを待つ。暫くすると、真っ白な顔で、海斗がフラフラと出てきた。渡しておいた着替えは、自分で履くことができたようだ。

「海斗、お砂で髪の毛とかもじゃりじゃりしてるから、このままお風呂いこっか。お着替えはまだないから病院のやつ着ようね」

お風呂に連れていくと、泣きじゃくりながらも身体を洗ったりすることはできて、その間にシーツを変えてもらっていたベッドに、もう一度横になった。

「さっぱりしたね。まだお腹痛い？」

そう聞くと小さく頷いたので、湯たんぽを布団の中に入れてあげると、少し身体の緊張が落ち着いた。

「如恵留くんね、いまパジャマとか取りに行ってくれてるからね。寝る前に着替えようね」

「のえる、」

「また戻って来るよ。お風呂頑張って疲れちゃったと思うからね、一回お昼寝しようね」

薬は十分に入っているから、部屋を暗くして、眠れる環境を整える。小さい頃からやっているように胸を摩って額を撫でると、目を閉じることができた。

「浅そうだなぁ」

すぐに起きてしまうかもしれないけど、寝ないよりはいい。少しでも寝て、体力を戻して、落ち着くことを願うばかりだ。

・・・

「いやぁぁぁああああああああ」

病棟に、海斗の叫び声が響く。フラッシュバックが頻繁に起きてしまって、夢も見てしまうから、殆ど眠れない。ふとした瞬間にパニックを起こしてしまう。