涙を拭いて #3 (ページ19)

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「お待たせしました」

面談室に阿部先生が来て、いつものように説明を受ける。

「強い薬を使っていますが、眠ることはできていません。おそらく、海斗くんはまだ怖い夢の中にいるんだと思います。こちらからの呼びかけには、反応できない状態です。また昨日までのように学校生活に戻るには、少し時間がかかるかもしれません」

「そうですか、、」

学校に行きたいと言う気持ちが、最近はよく見えるようになっていた。よっぽど調子が悪くなければ行きたいと言うし、授業も出られる時間が増えていた。このまま、快方に向かっていくと信じていたから、また足止めされてしまったようで辛い。

「如恵留くん、大丈夫？」

阿部先生声をかけられるまで、自分が泣いていることに気づかなかった。

「進んできたこと、経験してきたことがなくなってしまうわけじゃないから、大丈夫。ゆっくりゆっくり、進んでいこうね」

話を終えて、吉澤先生にお礼を言う。

「ありがとうございました、、すみません、泣いてしまって」

「いえ、、学校には、僕から伝えてしまっていいんですか？」

「よろしくお願いします」

「僕も、カウンセラーなので、、何かあったら、なんでも言ってください。学校も、みんなで、海斗くんを守りますから」

「ありがとうございます。本当に、いい学校に出会えてよかったです」

吉澤先生を見送って、海斗の病室に向かう。保護室に入るのは事故以来で、気を抜くと涙が溢れてしまう。

「なんでこんなに、弱くなっちゃったんだろ」

海斗を守らなきゃ、立派に育てなきゃ。その思いで毎日頑張ってきた。もちろんその気持ちは変わらないけど、海斗が辛い思いをしなくてはいけない現実が、悲しくて前を向けなかった。

「如恵留くん？」

佐久間さんに声をかけられて、ハッと我に帰る。

「あ、ごめんなさい、」

「謝らなくていいんだよ。ちょっと話せる？」

心のうちにあることを、全部聞いてもらったら少しだけ軽くなって、涙も止めることができた。

「いつでも、なんでも話してね。家族のケアも、俺たちの仕事だから」

「ありがとうございます」

「あのね、海斗なんだけど、すごく熱が上がっちゃって、苦しそうなの。近くにいてあげてくれる？」

その言葉に頷いて病室に入る。海斗は汗をびっしょりかいて、真っ赤な顔で浅い呼吸を繰り返していた。