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中村くんは、比較的自分の病気を受け入れているタイプだと思っていた。でもどちらかと言うと、今までは、あまり人と深く関わってこなかったから、悔しいとか、そういう思いを抱くことがなかったのかもしれない。いま辛いのは可哀想だけど、これはきっと、いい方に進むための痛みだ。
「そっか、、病気のことはね、先生は治してあげられなくて、ごめんね。でもね、なんで中村くんが、イライラするのかは分かるよ」
「え？」
「中村くんが、松倉くんとか、宮近くんとか松田くんのことを、大切に思っているから、心配だったり、不安だったり、何もできなくて悔しいと思ったりするの」
「たいせつ」
「そうでしょ？」
そう言うと素直に頷く。
「そしてね、ひとつだけ中村くんが間違っていることがあるよ」
「え」
「何もできなくないよ。混乱していたけど、中村くんの優しさは、絶対松倉くんに届いてる。それだけは、絶対だよ。覚えてないかもしれないし、また学校に来るまでに時間がかかるかもしれないけど、あの時、隣にいてくれたことは、ちゃんと分かってるよ」
そう言うと中村くんは乱暴に涙を拭いて、布団を頭までかぶる。
「寝る」
「そうしな。よく頑張ったね。少し身体休めて」
カーテンを閉めて、ベンチに戻ると今度は宮近くんがボロボロと涙を流していた。
「せんせー、、ちゃか、泣いちゃった」
「そっか。頑張ったんだね。少しひとりで落ち着いた方がいいかもね。松田くんは、元気100倍ですか？」
「んー100倍じゃないけど、俺は、授業いけるよ」
「うん。じゃあ、松田くんは授業頑張っておいで。2人のことは先生に任せてね。休み時間また来てくれる？」
そう聞くと大きく頷いたので、廊下まで見送る。
「2人のこと、連れてきてくれてありがとうね。松田くんがいなかったら、2人とももっと辛くなっちゃったかもしれない」
「俺、役に立った？」
「大活躍だよ。松田くんの優しい気持ち、みんなに伝わってるよ」
「ふふ、よかったー。俺バカだから、あんまり役に立たないけど、優しいのがいいところってママがいつも言ってくれるんだー」
「優しいって、誰もがもってる特技じゃないよ。とっても素敵だね」
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作者名：イカ | 作成日時：2022年8月28日 23時
