涙を拭いて #3 (ページ13)

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Shime

松倉くんの様子がおかしいからと呼ばれて、校庭に走る。脱力発作を起こした中村くんと、明らかにフラッシュバックを起こしている松倉くんがいた。

「フラッシュバックですね、、事故見ちゃったかー」

「突然のことで、対応できなくてすみません」

「まさかあそこで事故があるとは思いませんよね、、、ここは吉澤先生と俺で預かるので、大丈夫ですよ。先生、次も授業ありますよね」

「よろしくお願いします。中村たちの様子見てきます」

体育の先生を戻して、ちょうど来てくれたしずと一緒に、松倉くんの状態を確認する。

「松倉くん、大丈夫だよ。何も怖いことないからね」

身体を摩ったり、声をかけたりして現実に引き戻そうとしたけど、なかなか視線が合わない。視線の先にある事故現場にはパトカーも到着して、慌ただしい雰囲気が伝わってくる。

「移動させよう」

「俺、背負っちゃおうか」

「そうだね、その方がいいかも」

「松倉くん、ちょっと移動しようね」

その時だった。なんのきっかけか分からないけど、突然弾かれたように身体を動かして、支えていた俺たちの腕を振り払う。そして、嫌だ、と言いながら走り出したかと思うと、脚がもつれて転んでしまった。

「松倉くん、落ち着いて」

身体を抑えると、何かから逃れるように暴れる。

「預かってる頓服飲ませるね。しず、お兄さんとかかりつけに電話してもらえる？もしもの時は病院が迎えにきてくれる事になってるから」

「分かった」

校庭の真ん中であちこちから血を流して、それでもなんとか恐怖から逃れようと暴れる松倉くんを抱き込んで、頓服を捩じ込む。何年もこの学校で働いているから、パニックを起こしてしまった子に対応することは珍しくないけど、ここまで強く症状が出ている子は初めてで、次にどうすべきか、頭がフル回転する。

「松倉くん、怪我の手当てだけでもしたいなぁ。保健室まで行けそうかなぁ」

優しく声をかけながら、少しでも薬が効くのを待つ。でも状況はあまり変わらなくて、立ち上がろうとしたのか、また転んでしまう。泣いて、叫んで、周りが見えなくなるくらい怖くて、どれだけ辛いんだろう。砂塗れになりながらこれ以上怪我をしないように対応していると、電話を終えたしずが戻ってきた。