67.僕らはまだ ページ17
近藤さんと松平のとっつぁんの救出作戦は、成功こそしたものの、私たちが失ったものは大きなものだった。
でも、私たちは前に進まなければならない。
それが残った者たちの役目であり、義務なのだから。
＊
明日、この江戸を発つ。本格的に倒幕へ駒を進めることになるのだ。
お妙さんが仕事に復帰したという話を聞いた途端、近藤さんはそそくさと屯所を出て行った。土方さんも総悟も、出かけているらしい。
きっとみんな、この街に思いがあるのだろう。思い残すことのないように、あるいは、言葉を伝えるために。
「……来ちゃった」
お邪魔しても申し訳ないと思い、1人かぶき町をでて適当に歩いていれば、見慣れた商店街へ辿り着いた。
雄英の近くとも遠いとも言える場所に位置するそこは、将軍を京へ送り届ける前日に、切島くんと会った場所でもある。
あのとき煩かった蝉はすっかりいなくなり、青々しかった葉は黄色や赤へ徐々に変わり始めていた。
もうこの景色も、当分見ることはできない。そう思うと感慨深いものがあるが、長居する理由もないので踵を返そうとした、その時____
「A……？」
一瞬、あの日に帰ったような気がした。
夕陽に照らされる彼の姿、でも同じものといえばそれだけで、周りの景色は違う。
時代は変わる。季節も巡る。
「……ここに来れば、切島くんに会えるかなって思っちゃったみたい」
傘を畳んで、彼に近付いた。正面からしっかりと彼の顔を見据える。切島くんは微笑んでいた。
「たぶん、おれもだ」
お揃いだね、なんて言って私も微笑む。彼は見慣れたいつもの制服を着ていた。学校が終わってからわざわざ来たのだろうか。
「私、明日ここを発つんだ」
「……そっか」
「今までありがとう。楽しかったよ」
刹那。
腕をぐっと引っ張られ、温かいものに包まれた。
首筋に感じる吐息。どくんどくんと煩く鳴っているのは、どちらの心臓だろうか。
私も彼の背に腕を回し____抱き合う私たち以外に、人は1人もいなかった。
「俺さ」
「うん」
「絶対、すげえヒーローになるよ。みんなを、Aを守るために」
「……切島くんなら、なれるよ」
「遅くなっちまうかもしれない。でも、本当の意味で”すげえヒーロー”になれたとき____そん時は、おれの隣にいてくれないか」
____絶対に、迎えに行くから。
私たちの唇がそっと触れ合った。
一瞬だけの優しいキス、まだ子供だった私たちには、その他に相手にこの気持ちを伝える術を持っていなかったから。
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八千代(プロフ) - フオワァァァァ\(( °ω° ))/ナミトさんありがとうございます！！見たあとしばらく悶絶してました･･･！ (2016年9月5日 21時) (
レス) id: 954f8f8900 (このIDを非表示/違反報告)
ナミト(プロフ) - 鬼龍院リュナさん» コメントありがとうございます(*^^*)子供ですか…！書きたいです(ネタがない)！ぜひ！ (2016年8月21日 17時) (レス) id: ade0ad6b75 (このIDを非表示/違反報告)
ナミト(プロフ) - ゆあまいさん» コメントありがとうございます！そう言って戴けて本当に嬉しいです…！更新が停滞ぎみですがお待ちいただけると嬉しいです！ (2016年8月21日 17時) (レス) id: ade0ad6b75 (このIDを非表示/違反報告)
鬼龍院リュナ(プロフ) - すごく面白いです！このふたりの子供が見てみたい･･･|ωΟ｡)。内容や設定もすごく面白くて、番外編も好きです！ (2016年8月20日 14時) (レス) id: ab483157c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあまい(プロフ) - コメント失礼します。私が好きな銀魂とヒロアカで、とても丁寧な文。そして話の内容が私にとって面白かったです。今までお疲れ様でした。番外編も楽しい話を待ってます！ (2016年8月4日 13時) (レス) id: 7603089fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナミト | 作成日時：2016年7月16日 8時
