名探偵と奇怪人形

事件 一人二役 ページ34

嗚呼、また、あなたですね。




いえいえ、あなたと私は初対面です、話したことはおろか、あったこともないです。




え？じゃあ何故"また"なのかって？




ふふふ、ご想像にお任せしますよ。



というかあなたは誰なのかって？



それもご想像にお任せします。




素性も明かさない人と話なんてできないって？





如何してです？それはあなたも同じでしょう。




私のことなんて云ませんよ。



アハアハアハ、おっと失敬。



(ここは何処ですか)




何処でもないです、"ここ"です。




(あなたはなんで私の思っていることがわかるんですか)




別にいいじゃありませんか。



だって私が占い師だったら、あなたはその質問はしないでしょ。



もちろん、私は占い師なんて安いモンじゃないですけどね。




それよりあなた、私に聞きたいことがあるでしょう。



云ってごらんなさい。



(ありません。たとえあったとしても、誰とも知れないあなたに云うことなんて、あるものですか。)



なかったらあなたはここにいないんです。



それに、誰とも知れない誰かの方が、話しやすいこともあるでしょう。



(……)



ほら、やっぱりあるんじゃないですか。


さあ、云ってみなさい。



私はあなたの質問の答えを全て知っています。



簡単に云えば、私はあなたの持っていない、
全てを持っている。



(私は、あの人に、なんと思われていますか)




一つ目の質問がそれですか。




それは一寸云えませんね。



(でもあなたは私の質問に全て答えると云ったじゃありませんか)



"答える"とは云ってません。


私は全て知っていると云ったまでです。



ただ一つ、助言はして差し上げましょう。



あなたは間違っている。




(………)



もちろん、答えられる質問には答えます。



他には？




(私はマフィアじゃなくて、探偵社でも、
生きてはいけますか)




もちろん。



あなたは何処でも生きていくことは可能です。





ですけど今のままでは、探偵社に戻ったところで、ありもしない幻想に囚われて、あなたが
正気の沙汰ではなくなるでしょう。



あなたの愛した人を、そんなことで泣かせたくはないでしょ。





もう質問することはなさそうですね。



そうでしょう。



なら、私とはもうさよならですね。





私の名前が気になるみたいですね。




じゃあ教えてあげましょう。



私は_____________

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