手紙 ページ30
拝啓
江戸川さん
いきなりの休暇、本当に申し訳ございません。
助手が休むなどもってのほかだと存じますが、全てあなたの為にございます。
あの雨の中、私を運んでくださったのですね。
私は後から知りましたが、エエ、感謝の限りです。
あなたは私と一緒に行った最初の事件で、云いましたね。
あなたは忘れているかもしれないですね。
もちろん、私はしっかり覚えているんですよ。
"君は、赤がよく似合うんだね"
確か、そう云いましたね。
私もそう思います。
私には、紅が似合うのです。
ねぇ江戸川さん、あなたは、私のことが、きっと嫌いなんでしょう、厭なんでしょう。
それでも私はあなたが、大切なのです。
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拝啓
福沢社長
いきなりの休暇、本当に申し訳ございません。
私はやっぱり、探偵社のような真っ白い場所には存在できないのですね。
あるとき私は社長に話しましたね。
もしかしたら社長は、すっかり忘れているかもしれませんね。
私のつまらない身の上話です。
確かに、どうでもいい話でしたね。
社長はきっと、私の心情が理解し難いものになっているでしょう。
私はあの話を、誰でもいいから話したかったんです。
話をして、誰かが救われるわけでも、罪が消えるわけでもありません。
でも話さないと、私が私じゃなくなるような、そんな気がしました。
他の誰かじゃ駄目で、あなたしかいなかったのです。
本当に、申し訳ありませんでした。
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乱歩side___
何枚目だろう。
手紙の紙だけが無駄になっていく。
書いては捨てて、書いては捨てて。
この繰り返しで。
彼女に伝えたかった。
君のことは、決して嫌いじゃないこと。
何より、僕は君のことが、好きで好きで仕方がないんだってこと。
でも僕は、今まで君に、酷いことをしてきたね、今更、それは違うんだなんて、都合が良すぎるか。
都合が良くてもいい、だってそれは、嘘なんかじゃないから。
嘘なんかじゃ、ないんだ。
本当に、好きで好きで、仕方がないのに。
僕はそれの、伝え方がわからない。
君なら、如何するのさ。
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あの二通の手紙が届くのは、もう少し先の話。
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マルフォイ - まず、ページを開けて下さったことにありがとうございます。これからも頑張っていくつもりなので、何卒最後までお付き合いください!! (2019年7月5日 22時) (レス) id: b79a2a39e4 (このIDを非表示/違反報告)
魔乃 - さっすがですね!とてもよかったです!更新お願いします!応援しています! (2019年7月4日 23時) (レス) id: 42385bad72 (このIDを非表示/違反報告)
マルフォイ - ありがとうございます!今度からの更新は「運命論者の或る否劇 其の一」で更新を続けていくつもりなので、そちらの方も宜しくお願いします! (2019年6月5日 22時) (レス) id: bae9fea7d4 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 好きです!(唐突)面白かったです!更新頑張ってください! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:丸ノ内マルフォイ | 作成日時:2019年5月30日 23時