傘無し少女は雨の中 ページ18
_____ただ今、横浜付近に豪雨警報が発令されました。
お出かけの際はお気をつけください。____
江「はぁ?何云ってるの、与謝野先生」
与「そのままの意味さ、乱歩さん」
豪雨が降り注ぐ横浜の朝。
今現在、たったの二人しか出勤しておらず、
(出勤する、というか、乱歩は昨夜事務所で寝落ち、与謝野は気が向いたが故の早朝出勤)
何か秘密を話すにはもってこいであった。
与「乱歩さんは、Aのこと、如何思ってるのかッて。」
江「別に。彼女がいなくたって推理は出来るし事件解決だって出来る。助手の癖して駄菓子の買い出しにも行ってくれない。僕に助手なんていらないよ。」
それを聞いて与謝野は、嫌に神妙な顔をして
乱歩に云った。
与「いい加減、素直になりなよ、乱歩さん。
恋愛的に、じゃなくて、人間的に如何思ってるのかッてことだよ。」
江「だから、別に、って。如何とも思って
ない、僕にはいらない。」
与「…恥ずかしいンだろ?だけどね、あの子だって、傷付くンだ。確かにAは泣かないよ。でもね、知ってたかい、そのかわりに、哀しい顔するンだ。いや、諦めたような顔するンだよ。本当は、如何なンだい?」
沈黙が続く。空虚な空気が流れ、陰鬱にさせた。
江「…好きだよ、大好きさ、でも、彼女を目の前にすると、如何しても、思ってることと反対の言葉になっちゃうんだ。大嫌いって、云っちゃうんだよ。本当は、そんなこと、思ってないのに…」
しばらく間を置いた。
江「彼女が、傷ついてるかも知れない、そんな事、知ってた。だけど僕は、あれだけ云って
泣かない彼女に、文句一つ云わない彼女に、安心してたんだ。きっと僕を嫌いじゃないはず、そう思ってたんだ。」
今にも泣き出しそうな顔でポツポツと一言々々
喋っていく。
憂いも収まり、国木田が、春野が出勤してくる。
そして福沢も。
それに紛れてAも定時十五分前に出てきた。
『おはようございます』
よく通る彼女の声は、愛が感じられないというのに、周りの人を不思議と笑顔にさせた。
江「あっ、あの、、、」
『何ですか』
何ですかと云われても、こんな公共の場で、
好きでしたは云える筈がなかった。
乱歩には好きでしたのみならず、ごめんなさいすら憚られた。
ここで謝ることも、もう一人の自分が許さなかった。
江「何でもない、駄菓子、買ってきて」
そう云って、無愛想に駄賃を投げる事しか出来なかった。
傘無し少女は雨に泣く→←名探偵さん事件です、銃の用意は出来ましたか?
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マルフォイ - まず、ページを開けて下さったことにありがとうございます。これからも頑張っていくつもりなので、何卒最後までお付き合いください!! (2019年7月5日 22時) (レス) id: b79a2a39e4 (このIDを非表示/違反報告)
魔乃 - さっすがですね!とてもよかったです!更新お願いします!応援しています! (2019年7月4日 23時) (レス) id: 42385bad72 (このIDを非表示/違反報告)
マルフォイ - ありがとうございます!今度からの更新は「運命論者の或る否劇 其の一」で更新を続けていくつもりなので、そちらの方も宜しくお願いします! (2019年6月5日 22時) (レス) id: bae9fea7d4 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 好きです!(唐突)面白かったです!更新頑張ってください! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:丸ノ内マルフォイ | 作成日時:2019年5月30日 23時