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事件 芋虫・江川蘭子 其の二 ページ15

そこには、





四肢共にバラバラにされた、両親の死体が、
あった。



生きてる内に切断されたのか、顔は二人とも
苦悶の表情に満ちていた。


そして目からは赤い液体が。


声も出ない。



六つの娘とて、取り返しのつかないことくらいは、見てすぐにわかった。



足先まで迫り来る血潮の波は、リビングの部屋
全体を紅く染めていた。



月明かりに照らされた鮮血の、

嗚呼なんと奇怪なることよ!


てらてらと映し出された自分の顔を、Aは唯眺めることしか出来なかった。



その白い頬を、涙がつたることも。




ひたひたと二人の元へ歩いた。


足の力が抜け、ぺたりとその場に座り込んでしまった。
 




近所から「血臭がする」と警察に通報が入ったのは、その翌朝のことであった。



その場にいた全ての人間が、その光景に目を背けた。


バラバラ死体の血の海の中に、一人少女が佇んでいる。


衣服、頰や手を、真っ赤に染めて。



ギョロリと顔だけを周りの人間に向けた。


一人の警官がヒッと悲鳴にも似た声を上げる。



Aはすぐに警察に引き取られ、何があったのかを詳しく説明させられた。



しかしいくら利口でもたかだか六つの娘。



はっきりとした事件の詳細は分からずじまいに、事件は闇に葬り去られた。



事件後一週間ほどは、地域の新聞で騒がれたりしたものだが、警察の圧力により、鎮圧された。


まさかあんな幼い子供に、あのような残忍極まる所業が成せたとも思えない。



それで、彼女を疑うものは誰一人としていなかった。
それどころか、皆判を押したように

「大丈夫?」

「辛いよね」


と似たり寄ったりな励ましを送った。


その中に、本当に彼女を救った人間など、存在しなかったのだが。


つまるところそんな励ましを送ったとて、唯の野次馬にすぎないのだ。



無論、彼女は犯人ではない。


彼女も、警察も、名も知らぬ犯人による犯行である。



故に彼女は自らが殺したと思うに至った。


直接手は加えてないが、自分には異能がある事を、自分で誰よりも知っていた。


自分が異能を持っていたが故、
両親は殺された。


だから、自分が、殺した。



_____________________

以上で《事件 芋虫・江川蘭子》の章は終了です。

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マルフォイ - まず、ページを開けて下さったことにありがとうございます。これからも頑張っていくつもりなので、何卒最後までお付き合いください!! (2019年7月5日 22時) (レス) id: b79a2a39e4 (このIDを非表示/違反報告)
魔乃 - さっすがですね!とてもよかったです!更新お願いします!応援しています! (2019年7月4日 23時) (レス) id: 42385bad72 (このIDを非表示/違反報告)
マルフォイ - ありがとうございます!今度からの更新は「運命論者の或る否劇 其の一」で更新を続けていくつもりなので、そちらの方も宜しくお願いします! (2019年6月5日 22時) (レス) id: bae9fea7d4 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 好きです!(唐突)面白かったです!更新頑張ってください! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:丸ノ内マルフォイ | 作成日時:2019年5月30日 23時

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