131話▽晴れやかに送る ページ35
今日は何の仕事もない久々のオフ。
そこでペコに会いに行こうと、珍しく支度を早く済ませて家を出た。
ペコはキミ島住みか。
スクーターを押しながらアプリコッ湖に向かうと……
『え、出かけちゃうの』
──そこにはクイーン・ママ・シャンテ号が停まっていて。
ペコと男爵がクルー達に指示を出しながら、出航準備を進めていた。
「我々は魚人島に行くのだボン」
『ちぇ〜……遊ぼうと思ったのに』
「す、すまねェ!今度絶対空けるからよ」
わざとらしく頬を膨らませれば、ペコは慌てて謝ってくる。
こういうトコ、からかい甲斐あるなぁ。
『にしてもこの船デカいですね』
「10トンのお菓子を運搬するのだ。
並の船には務まらないでアムール」
「スピードだって重要だ!
ママは待たされるのが大嫌いだからな。
ホラ!お前がくれた時計、今も使わせてもらってるぞ」
ペコがスーツのポケットから取り出したのは、見覚えのある懐中時計。
(……好き〜!)
それは去年の誕生日、自分が彼にあげたものだった。
『もぉペコ〜♡
時計ぐらい毎年100個送るわ♡』
「100個は流石に使いきれねェよ!?」
「……そろそろ時間でトワエモア」
男爵の無慈悲な宣告。
自分は少しでも長く話していたかったのか、咄嗟にペコの懐中時計に触れていた。
『……そうだ、ペコ』
「ん?」
『その時計、ちょっと貸して』
ペコは不思議そうに首を傾げ、懐中時計を差し出す。
自分はソレを受け取ると、蓋を開けてそこに"紙"を挟んだ。
「何だ?」
『"ビブルカード"。
ずっと渡したかったんだけど……タイミング逃してて』
実はここに来てすぐの頃、自分はビブルカードを作っていた。
目的はもちろんペコ。
本当は彼のカードを貰う方が好ましかったが、流石にそれは頼みづらく。
常に場所を把握していたいとか、そこまで重苦しい考えはもう捨てたつもりだ。
それでも……何かしら目に見える繋がりを所望するのは、やはり"執着"から来るものなのだろうか。
『海
お土産待ってるよ』
ペコは少し驚いた後、ニカリと笑った。
懐中時計の重みが、自分の手から彼の手へ移る。
「ありがとうなA。
お菓子、少し取り分けとくぜ!ガオ」
「全く、つまみ食いも大概にするでジュール」
天気は快晴。気温も安定。
この日は彼らの航海が希望に満ちるような、そんな風に感じられた。
──だけど……これが彼らとの、"例の事件"前の最後の会話となるのである。
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます!駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます! (2022年9月30日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました!!主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました!今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます!また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします!最後までのご清覧、本当にありがとうございました! (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても良いお話でした!今後も頑張って下さい!(*´ω`*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます!この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました! (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なめこ | 作成日時:2020年10月30日 18時