122話▽待ち望んだ新年 ページ26
夜通し生放送後の寝不足の頭に、友の声が溶けるように染み入る。
その心地良さからか疲れからか、はたまた両方か……自分は言うつもりもなかった言葉を口走った。
『昨日、父さんと会った』
「親父に？」
電伝虫の向こう側にいるペコは意外そうな反応を見せた。
……顔は見えていないワケだが。
『そ。この前"会いたい"って言われてさ。
休憩時間に会ってきた』
「で、でもよ……確かお前の親父って」
『まぁ仲は最悪なんですけどネ』
ペコは知っている。自分と父さんの関係を。
だから心優しい彼は、今までにもあまり父さんのことを言及してこなかった。
『そんで何言われたと思う？
"一緒に死ね"って』
「……」
『なんかもぉ、逆に安心しちゃったわ！
外見変わっても中身は相変わらずで──……』
愚痴っぽくこぼす自分を、ペコはただただ黙って聞いてくれて。
溜まっていたガスを抜くように言葉が溢れて止まらない。
自分は流れに任せて全てを吐き出す。
「A」
『ん？』
「誰が何と言おうと……おれはお前の味方だぜ」
ペコにそう言われて、自分は初めて気づいた。
自分の声が、ほんの僅かに震えていたことに。
(……あーあ)
ちょっとショック受けてんじゃん自分。
電伝虫越しに、1人弱気に笑ってみせる。
「Aと別れてから……実は寂しく感じたこともあったんだ」
『え』
今度は自分がペコに驚かされる番だった。
「でもおれは弱音も吐かずにここまで来れた。
お前に勇気を貰えたからだぜ！
テレビで活躍してるお前を見て、おれも頑張ろうって思えた」
『……ペコ』
「お前は星だ。1等星だ。
だからA、自信を持て！親父に言われたことなんて気にするな！！
お前を悪く言うヤツはおれが許さねェからよ！！！」
顔を見なくても分かる。
彼は今、柔らかく笑っている。
彼はそういうヤツだから。
『……ちょっと自分で言ってて恥ずかしくなってる？』
「ガオ！なんで分かった！？」
『ふはッ、ペコのことだからそうだろうって』
"で、でも本当のことだからな！"と言ってくれるペコは本当に純粋なんだと思う。
自分はそんな彼が……何処までも愛しく感じるのだ。
「……良い年になると良いな」
『ん。
スタッフが楽屋に呼びかけに来たので、ペコに軽い別れの挨拶をして電伝虫を切る。
新しい年を迎えたからだろうか。今はとても解放的な気分だ。
気持ちも新たに、自分は楽屋を後にした。
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます！駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます！ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました！！主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました！今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます！また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします！最後までのご清覧、本当にありがとうございました！ (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても良いお話でした！今後も頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます！この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年10月30日 18時
