121話▽年の瀬に残す ページ25
「お前も変わったな」
今日は大晦日の忙しいスケジュールの合間を縫って、ファミリーレストランに来ていた。
それはある1通の手紙が家に届いたからだ。
"──会って話したい"
『……父さんこそ』
言われた場所に来てみれば、そこには記憶とだいぶ違う父さんの姿があった。
毛量はさほど減っていないものの白髪混じりの頭。
昔は女に不自由がなかった端正な顔立ちも、今は皺が刻まれ年相応に老けている。
まぁ別れたのは20年ほど前だ。変わって当然か。
『
「……商船に乗って密航した」
『わお。そりゃまた大胆な』
彼の目はどこか虚ろだった。
密航……そんなことするような人だった？
浮気はしょっちゅうしてたけど。
ここで沈黙が訪れる。
自分は注文していた安味のコーヒーを啜った。
「おれと死んでくれないか」
口からこぼれ落ちたような声。
そう言う父さんの顔は無表情で。
(……は？)
自分は、酷く腹が立った。
『話したいことってソレ？
1度捨てた娘に再会早々良く言えたなぁ。
ボケでも面白くないわ』
"いちいち泣くな！鬱陶しい"
"おれが帰るまでに全部やっとけ"
コイツのせいで人生滅茶苦茶にされたのに。
町にもロクに出れなくて、家からも外からも居場所を奪ったくせに。
それでもどこかで期待してしまっていた自分に腹が立つ。
謝罪の言葉1つでも、愛の言葉1つでも望んでしまった自分に無性に腹が立つ！
「……女もみんな愛想を尽かして離れていった。
愚かだったよ。今じゃ生涯孤独の身だ。
もうおれは……生きる喜びも目的も、何も残っちゃいない」
『……』
「娘であるお前以外は。
1人になって分かった。おれは寂しい人間だ。
だから……ダメ元でのお願いだ。一緒に──……」
『黙れ』
静かに、それでも荒らかに呟く。
恐らくこの声は他の客には聞こえていないだろう。
目の前に座る男は口を閉ざすも……別段驚いた様子もなかった。
ますます気に入らない。
(もういっそ、人目も気にせずここで殺──……)
良からぬ考えが一瞬よぎったが、そんな気力もふと失せてしまった。
瞳に映る
『……死ぬならご勝手に』
「！
A……」
『あ、あと。
2度と名前呼ばないでくれます？
小銭を机に置いて席を立ち去る。
店の外に出れば、綺麗な夕焼け空が広がっていた。
『……んん、スタジオ行こ』
自分はその空気を閉じ込めるように、大きく深呼吸をした。
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます！駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます！ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました！！主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました！今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます！また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします！最後までのご清覧、本当にありがとうございました！ (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても良いお話でした！今後も頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます！この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年10月30日 18時
